ESAが一部の探査機や衛星の運用を休止。新型コロナの影響で出勤職員を減らす

宇宙開発や宇宙探査の分野でも新型コロナウイルス(COVID-19)の影響が広がり続けています。欧州宇宙機関(ESA)は3月24日、ドイツのダルムシュタットにある欧州宇宙運用センターに出勤する職員を減らすために、一部の探査機や衛星の運用を休止すると発表しました。

■運用が休止されるのは「ソーラー・オービター」など4つのミッション

欧州宇宙運用センターのメインコントロールルームを写したパノラマ写真(Credit: ESA/J. Mai)

欧州における新型コロナウイルスの感染拡大にともないESAではすでに対策が進められており、この2週間は大半の職員がリモートワークを実施しているといいます。今回の措置はさらなる感染対策として打ち出されたもので、出勤が必要な部署である欧州宇宙運用センターが管理しているミッションの一部をスタンバイ状態に移行することで、出勤する職員の数を減らし、感染のリスクを引き下げることが目的です。

欧州宇宙運用センターの管理下にある21のミッションのうち、運用が休止されるのは、今年の2月に打ち上げられたばかりの太陽観測衛星「ソーラー・オービター」、2016年に打ち上げられた欧露共同の火星探査ミッション「エクソマーズ」の火星探査機「トレース・ガス・オービター(TGO)」、2003年打ち上げの火星探査機「マーズ・エクスプレス」、そして2000年以降に打ち上げられた4機の衛星で構成される地球の磁気圏観測衛星「クラスター」の4つのミッションです。

もともと探査機や衛星は地球との通信が一時的に制限されたり途絶えたりすることも想定して設計されています。また、これらのミッションにおける探査機や衛星は軌道が安定しているため、ESAのPaolo Ferri氏は「限られた通信状況が何か月間か続いたとしても、安全に運用できる自身がある」と語っています。

■地球フライバイを控えた「ベピ・コロンボ」は運用を継続

地球スイングバイを実施する「ベピ・コロンボ」の探査機を描いた想像図(Credit: ESA/ATG medialab)

いっぽう、水星探査ミッションの「ベピ・コロンボ」は、運用が継続されるもののひとつです。2018年に打ち上げが実施されたベピ・コロンボは、ESAの水星表面探査機「MPO」と宇宙航空研究開発機構(JAXA)の水星磁気圏探査機「みお」から構成されるミッションで、2025年の水星周回軌道投入を目指して飛行を続けています。

ベピ・コロンボでは惑星の重力を利用して軌道を変更するスイングバイを何度か実施することになっており、来月4月10日にはその1回目となる地球スイングバイが控えています。スイングバイの実施には運用センターからの支援が必要となるため、今回の休止措置には含まれていません。

ESAのヤン・ヴェルナー長官はこの発表において、「科学者、エンジニア、ESAの職員とパートナー、この世界規模の危機的な状況のなかでミッションを遂行するすべての人々に感謝したい」とコメントしています。

 

Image Credit: ESA/J. Mai
Source: ESA
文/松村武宏