「アンタレス」ロケットの失敗、AR社がオービタルATK社に5000万ドルを支払うことで決着

2014年10月に起きた「アンタレス」ロケットの打ち上げ失敗について、ロイター通信やSpaceNewsなどは2015年9月25日、エンジンを供給したエアロジェット・ロケットダイン社が、ロケットを製造したオービタルATK社に対して、5000万ドルを支払うことで合意したと報じた。

失敗原因をめぐっては、両社が責任の押し付け合いを続けていたが、これにより論争は決着することになる。ただし、金額以上の詳細は不明である。

この事故は2014年10月28日に発生したもので、シグナス補給船運用3号機を載せたアンタレス・ロケットが打ち上げ直後に爆発し、墜落。シグナス補給船には国際宇宙ステーションに送り届けるための物資や実験機器などが搭載されていたが、すべて失われることになった。

オービタルATK社は事故の原因について、エアロジェット・ロケットダイン社から供給された第1段ロケット・エンジン「AJ-26」の、ターボ・ポンプの誤動作にあると主張していた。AJ-26の基になったのは、ソヴィエト連邦が今から40年ほど前に開発、製造し、その後倉庫で保管されていたNK-33というエンジンで、エアロジェット・ロケットダイン社はそのNK-33を輸入し、アンタレスに装着するために細かな改修を施しただけにすぎず、基本的には旧式のエンジンのままである。

また2014年5月にエンジンの燃焼試験をおこなった際に爆発を起こしていたこともあり、AJ-26エンジンが原因という説は有力視されていた。

しかし、そのエアロジェット・ロケットダイン社は、オービタルATK社側の組み立て時の不手際が原因であると主張していた。今年2月にはロイター通信が、事故調査団の関係者の発言として、墜落後のエンジンの残骸から乾燥剤が発見されたことから、オービタルATK社が本来、組み立て時に取り除くはずの乾燥剤を残したまま打ち上げたために、乾燥剤がエンジンへ流れ込んで火花が発生。その火花が火災を誘発し、エンジンの爆発に至ったのではないか、という説を報じている。

オービタルATK社はこれに対して、「それは可能性のひとつではあるけれども、主要な候補ではない」と回答。また別の関係者は、事故の「根本的な原因」を見つけるのは困難であることから、原因の断定はせずに調査を終えることになるかもしれないとも語っていた。

今回の報道によると、エアロジェット・ロケットダイン社がオービタルATK社に5000万ドルを支払うことは確実とされるものの、両社の間でどのような合意の上でこの結論が下されたか、その詳細は不明となっている。エアロジェット・ロケットダイン社は、事故の分析結果を明らかにする予定はなく、今回の詳細も発表しないと表明している。

なお、オービタルATK社はすでに、AJ-26の使用を取り止め、新たに「RD-181」というエンジンを組み込んだ、改良型アンタレスの開発を進めている。RD-181はロシアが開発した新型エンジンであり、改良型アンタレスのエンジンとして、昨年の打ち上げ失敗が起こるより前から候補に挙がっていた。

またRD-181は、オービタルATK社が製造元のNPOエネルガマーシュから直接購入する形となるため、アンタレスをめぐるエアロジェット・ロケットダイン社との関係は、これですべて切れることになる。

改良型アンタレスの地上燃焼試験は早ければ今年末ごろにも、また打ち上げは2016年3月ごろに予定されている。

 

■UPDATE 1-Aerojet to pay Orbital $50 million over Antares rocket accident | Reuters
http://www.reuters.com/article/2015/09/24/aerojet-orbital-atk-settlement-idUSL1N11U35A20150924

Image Credit: NASA

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