WISE(広視野赤外線探査機)ミッションが2012年に公開した全天観測データに基づいて構成された全天画像
【▲WISE(広視野赤外線探査機)ミッションが2012年に公開した全天観測データに基づいて構成された全天画像(Credit:NASA/JPL-Caltech/UCLA)】

2020年、世界中でネオワイズ彗星(C/2020 F3が注目を集めました。彗星には発見者の名前が付けられますが、ネオワイズ彗星はアメリカ航空宇宙局(NASA)の赤外線天文衛星「NEOWISE(ネオワイズ)」の観測で発見されたことから、衛星の名前にちなんで命名されています。

NEOWISE衛星は、もともとWISEWide-field Infrared Survey Explorer:広視野赤外線探査機)」という名前で2009年に打ち上げられました。赤外線は人の目で捉えることはできませんが、この宇宙に存在する数多くの天体から放射されています。赤外線で全天を捜索したWISE衛星は小惑星や褐色矮星の検出などの成果をあげて、2011年に主要な任務を成功裏に終えました。

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【▲WISE(広視野赤外線探査機)衛星の想像図(Credit:NASA/JPL-Caltech)】

その後、WISE衛星は2013年に運用が再開され、ミッションおよび衛星にはNEOWISENear-Earth Object Wide-field Infrared Survey Explorer)」という新たな名前が与えられました。NEOWISE衛星のミッションではNEONear-Earth Object:地球近傍天体)」のような、地球の脅威になり得る小惑星や彗星の捜索が目的となっています。

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NEOWISE衛星は半年ごとに全天の画像を取得しています。その画像をつなぎ合わせると、何億もの天体の位置と明るさを示す「全天マップ」が出来上がります。これまでに作成された18枚の全天マップをもとに、科学者たちは10年以上に渡る空の変化を映し出したタイムラプス動画を作成・公開しました。

個々の全天マップは天文学者にとって宝の山とも言うべき非常に重要な資料ですが、タイムラプス動画として時間の経過に沿って見ることで、宇宙をより深く理解することができます。時間の経過とともに位置・明るさ・形状などが変化する天体を扱う天文学の領域は「時間領域天文学」と呼ばれています。

このタイムラプス動画には、オープニングに続いて「NEOWISE衛星による全天スキャンアニメーション」「ブラックホールに“餌”を与えている様子(ブラックホールが星を“食べている”様子を示唆する映像)」「終末期を迎えている脈動星」「星形成領域内の原始星」「空を横切る褐色矮星」「原因不明の恒星の増光」といった映像が順に含まれています。以下、動画に付記されている「タイムスタンプ」を転載しておきます。

0:44 – NEOWISE all-sky scan animation
1:03 – Feeding black hole
1:14 – Pulsing star reaches the end of its life
1:21 – Protostars in star-forming region
1:34 – Brown dwarf moves across the sky
2:00 – Unexplained stellar brightening

なお、2023年3月には、NEOWISE衛星による19枚目と20枚目の全天マップが公開される予定です。もしかしたらタイムラプス動画もこの2つのマップを加えたものに更新されて、新たな発見がもたらされるかもしれませんね。

 

Source

  • Video Credit:NASA/JPL
  • Image Credit:NASA/JPL-Caltech/UCLA、NASA/JPL-Caltech
  • NASA - NASA Telescope Takes 12-Year Time-Lapse Movie of Entire Sky
  • NASA/JPL - NEOWISE Mission Summary

文/吉田哲郎

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