イギリスのケンブリッジ大学は8月26日、ケンブリッジ天文学研究所のニック・マドゥダン博士率いる研究チームが、系外惑星の新しい分類として「ハイセアン(Hycean)惑星」を提唱したと発表しました。ハイセアン惑星は、水素を豊富に含む大気の下に、惑星規模の海が存在し、生命が存在する可能性があるといいます。
これまで系外惑星における生命探査は主に地球に近い大きさ、質量、温度、大気の組成などを持つ系外惑星についておこなわれてきました。
しかし、研究チームは、2020年に発表した地球の2.6倍の大きさを持つミニネプチューン「K2-18b」に関する論文において、この種類の系外惑星においても、一定の条件があれば、生命が存在しうる可能性があることを明らかにしました。そして、その後、研究チームは、系外惑星とその主星についてどのような特徴があれば、この条件が満たされうるのか、これまで知られている系外惑星についてどの系外惑星がこの特徴を持っている可能性があるのか、そのような系外惑星についてバイオシグネチャー(biosignatures=生命存在指標)は観測可能か、などを詳しく調べました。ちなみにミニネプチューンとは地球の10倍ほどから海王星ほどの質量を持つ系外惑星をいいます。
そして、研究チームはその結果に基づいて系外惑星の新しい分類としてハイセアン惑星を提唱しました。
ハイセアン惑星は、大きさが最大で地球の2.6倍ほどにまでなりえ、水素を豊富に含む大気の下に、惑星規模の海が存在していると考えられます。その気温は最大で200℃近くほどにまでなりえますが、その海中の環境は地球のそれとさほど変わらないと考えられるといいます。
また、ハイセアン惑星には、潮汐ロックされ永続的に夜の部分と昼の部分が固定された暗いハイセアン惑星(‘dark’ Hycean worlds)と主星からほとんど放射エネルギー(radiation)を得られない冷たいハイセアン惑星(‘cold’ Hycean worlds)があるといいます。暗いハイセアン惑星の場合、生命が存在可能なのは夜の部分のみということになります。
研究チームによれば、ハイセアン惑星の大気における、酸素、オゾン、メタン、亜酸化窒素(N2O)などのバイオシグネチャーは分光観測(spectroscopic observations)によってたやすく検出できるだろうといいます。ハイセアン惑星は、地球によく似た惑星に比べると、サイズが大きく、気温が高いうえに、大気に水素が豊富に含まれるために、これらのバイオシグネチャーを検出しやすいためです。
研究チームではすでに相当数のハイセアン惑星の候補を確定しています。これらの候補は、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡などの次世代望遠鏡による詳細な観測の主要な候補になっています。
研究チームではこれから数年以内に系外惑星においてバイオシグネチャーが検知される現実的な可能性があると考えています。
Image Credit: Amanda Smith
Source: ケンブリッジ大学のプレスリリース/論文
文/飯銅重幸