星形成領域「LHA 120-N 150」(Credit: ESA/Hubble, NASA, I. Stephens)

【今日の天体紹介:星形成領域LHA 120-N 150】

淡い赤色を放つこちらの天体は、南天の大マゼラン雲にある星形成領域「LHA 120-N 150」(以下「N150」)です。画像に向かって上下方向に伸びるフィラメント状の構造の向こう側には、電離した水素ガスの雲が左右方向へ広がっている様子が見えています。自ら輝く星としての最期を迎えた恒星によって形成される惑星状星雲や超新星残骸にも似ていますが、N150のような星形成領域は高密度のガスから恒星が誕生する場所で、「星のゆりかご」と表現されることもあります。

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N150は「タランチュラ星雲」の呼び名で知られる星形成領域「かじき座30(30 Doradus)」の近くにあります。銀河としては比較的近い約16万光年先の大マゼラン雲に存在し、塵に観測をさまたげられることもないため、タランチュラ星雲とその周囲にある星形成領域は、特に太陽よりも重い大質量星が誕生する様子を調べるのに適した「実験室」となっています。

たとえば3年前に発表された研究では、孤立して誕生する大質量星があるのかを調べるために、N150が観測されました。大質量星は複数の星が集まった星団として誕生すると予想されていますが、実際には大質量星の1割が孤立して誕生しているように観測されています。Ian Stephens氏らの研究チームがN150を含む幾つかの星形成領域を「ハッブル」宇宙望遠鏡によって詳しく観測したところ、一見孤立しているように見える若い大質量星の周囲にも、前主系列星に分類される若い星が数多く存在していたことがわかりました。

また、昨年11月に発表された研究では、N150と同じくタランチュラ星雲の近くにある「N159」における大質量星の形成を福井康雄氏らの研究チームが「アルマ望遠鏡」で観測した結果、2億年ほど前に大マゼラン雲に接近した小マゼラン雲から移動したガスによって、大マゼラン雲における星形成活動が活性化された様子が明らかになっています。

この画像は、ハッブル宇宙望遠鏡に搭載されている「広視野カメラ3(WFC3)」によって撮影されました。

ハッブル宇宙望遠鏡が撮影したLHA 120-N 150と周辺の様子(Credit: ESA/Hubble, NASA, I. Stephens)

 

関連:銀河の相互作用と大質量星の誕生、2つを結びつける「要(かなめ)」をアルマが観測

Image Credit: ESA/Hubble, NASA, I. Stephens
Source: ESA/Hubble
文/松村武宏

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