東京大学木曽観測所は4月23日、超広視野CMOSカメラ「Tomo-e Gozen(トモエゴゼン)」を用いた観測により、3億5000万光年先の銀河で起きた超新星爆発を発見したと発表しました。超新星には「SN 2019cxx」の名称が付与されています。

超新星を発見した「トモエゴゼン」は、完成時点で84個のCMOSセンサーを組み合わせた、大掛かりなデジタルカメラのような最新鋭の観測装置です。木曽観測所に設置されている105cmシュミット望遠鏡に搭載することで、満月の見かけの直径の18倍という広い範囲を一度に観測することができます。

取得された大量のデータは専用の解析ソフトウェアによって分析され、何か変化があればすぐ察知できる体制が整っています。一晩で同じ空を複数回撮影することで、高速で移動する小惑星流星、いつ発生するのか予測できない超新星など、わずかな時間で変化する天文現象を捉えることを目的としています。

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こちらの左端の画像は、2019年4月5日21時8分にトモエゴゼンによって撮影された、超新星SN 2019cxxを含む銀河の姿。2本の赤い線に挟まれた部分に超新星が写っています。

この画像だけを見ても超新星爆発が起きているのかどうか素人目にはわかりませんが、過去に「パンスターズ(Pan-STARRS)」計画によって撮影された同銀河の画像(中央)との違いを解析すると、右端の画像のように新たな天体の存在が浮かび上がります。

その後に実施された国内外の天文台による追跡観測により、SN 2019cxxはIa型の超新星と判明しました。発見時点では爆発から10日程度が経っており、最も明るくなる5日ほど前であったと考えられています。

今回の超新星を発見した時点では、トモエゴゼンを構成するCMOSセンサーが4分の3(63個)しか揃っていない未完成の状態でしたが、超新星発見が発表された4月23日には残る4分の1が揃い、現在は合計84個のCMOSセンサーがすべて組み込まれています

こちらの画像は、完成したトモエゴゼンによって撮影された「しし座」付近の様子。センサーの隙間を補うために少しずつ向きをずらして撮影された6枚の画像が合成処理されています。

ちょうど1か月前の3月25日、トモエゴゼンによって小惑星「2019 FA」が発見されたことをお伝えしましたが、完成したトモエゴゼンでは爆発直後の超新星を年に数例観測できるとも期待されています。未完成でも2か月連続で新天体を発見したトモエゴゼン、今後の活躍が楽しみです。

 

Image credit: 東京大学木曽観測所
http://www.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/kisohp/NEWS/SN2019cxx/index.html
文/松村武宏

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