英国宇宙機関(UKSA)は1月16日、2003年に火星への着陸に挑むも行方不明になった火星探査機ビーグル2が、米航空宇宙局(NASA)の探査機の観測によって約11年ぶりに発見されたと発表した。

ビーグル2は英国によって開発された火星探査機で、英国にとっては初の惑星探査機であり、また欧州にとっても初となる火星への着陸を目指した探査機だった。本体は直径66cmの円盤状をしており、着陸後に蓋を開き、続いてその内部にある太陽電池を、桜の花びらのような形に開く。また本体にあるロボットアームなども展開され、探査を行う計画だった。火星の大気圏への突入に耐えるためのシェルやパラシュート、着陸時の衝撃を受け止めるエアバッグなどを含めた質量は69kg、ビーグル2単体では33.2kgという、小さな探査機だ。

ビーグル2という名前は、かつてチャールズ・ダーウィンが探検で使用した船「HMSビーグル」から取られている。ダーウィンがHMSビーグルでガラパゴス諸島を訪れ、多種多様な生物を観察し、進化論への着想を得たように、ビーグル2によって火星の生命の手がかりを得ることが目指されていた。

ビーグル2は欧州宇宙機関(ESA)の火星探査機マーズ・エクスプレスに搭載され、2003年6月に打ち上げられた。そして12月19日にマーズ・エクスプレスから分離され、12月25日に火星への着陸に挑んだ。しかし、予定の時刻になってもビーグル2からの応答がなく、その後も信号を捉えようとの努力がなされたものの奮闘むなしく、翌2004年2月に打ち切られ、ミッションは失敗したと発表された。

果たして、ビーグル2がどうなったのか――火星の大気圏への突入で燃え尽きたのか、パラシュートが開かずに地表に激突したのか、あるいは着陸には成功したものの、故障で動かなかったのか――は、長年の謎だった。しかし今回、NASAの火星探査機マーズ・リコネサンス・オービターに搭載されているHiRISEと呼ばれる、高い分解能を持つカメラによって、ビーグル2と思われる物体が発見された。

発見されたのはイシディス平原と呼ばれる場所で、当初着陸を目指していた地点に程近い場所であった。写真にはビーグル2の他、パラシュートやカバーと思われる物体も写っており、また本体は、ビーグル2のチームやNASAの分析によって、ビーグル2と同じ大きさや形、色などを持っていることが立証されたという。

また、4枚ある展開式の太陽電池のうち、2枚しか開いていない様子も分かる。ビーグル2が上空の探査機を介して地球と通信するためのアンテナは太陽電池の下にあり、展開しないと塞がれたままになる。

つまりビーグル2は、火星の大気圏への突入には成功し、無事に着陸はしたものの、何らかのトラブルによって太陽電池がすべて展開できず、アンテナが塞がれたままだったことから、上空の探査機を介して通信を地球に送ることも、また受け取ることもできなかったことが明らかとなった。あいにく、太陽電池が部分的にしか展開していないこと、そしてアンテナが塞がれてしまっていることから、ビーグル2を蘇らせることは不可能だという。

英国宇宙機関の長官を務めるデイヴィッド・パーカー博士は「宇宙探査の歴史は、つねに失敗と成功によって創られてきました。今回の発見によって、ビーグル2は、これまで考えられていたよりも多くの成功を収めていたことが分かりました。これは間違いなく、欧州の火星探査における重要なステップであると言えます」と語っている。

 

■UK-led Beagle 2 lander found on Mars - News stories - GOV.UK
https://www.gov.uk/government/news/uk-led-beagle-2-lander-found-on-mars