スペースX社と米航空宇宙局(NASA)は1月6日、この日予定していたファルコン9ロケットの打ち上げを延期すると発表した。ロケットに問題が見つかったためで、次の打ち上げは早くとも1月9日以降となる予定だ。

打ち上げは米東部標準時2015年1月6日6時20分(日本時間2015年1月6日20時20分)に予定されていたが、打ち上げの1分21秒前になり、コンピューターがロケットに異常があることを検知し、カウントダウンを自動的に停止させた。国際宇宙ステーションへロケットを打ち上げる際には、その軌道の関係などから1日に1度しか打ち上げられる機会はなく、カウントダウンが止まった時点で、この日の打ち上げは行われないことが決定した。

その後の発表によれば、異常が見つかったのは、ロケットの第2段ロケットエンジンにある推力偏向機構を動かすためのアクチュエイターだったとのことだ。この装置は、エンジンの向きを動かして噴射する方向を変えることによって、ロケットの飛ぶ方向を制御するために装備されている。同社CEOのイーロン・マスク氏のツイートによれば、異常が見つかったのはZ軸方向に動かすためのアクチュエイターだったという。

次に打ち上げが可能になるのは、米東部標準時2015年1月9日5時9分(日本時間2015年1月9日19時9分)とのことだ。ただ、問題解決に時間を要するようであれば、さらなる延期もあり得る。

今回ファルコン9が打ち上げるのは、国際宇宙ステーションへの補給物資を満載したドラゴン補給船運用5号機(CRS-5)で、食料品や衣類、メンテナンス用の部品や実験機器など、2,317kgが搭載されている。スペースX社はこれまでに5機のドラゴンを国際宇宙ステーションに向けて打ち上げており、そのうち最初の1機が試験機、あとの4機が実運用機として運用され、すべて成功を収めている。

そして今回のミッションでは、打ち上げ後に分離されたファルコン9の第1段を、大西洋上に浮かべたプラットフォームの上に降ろす試験が実施される。

同社では、ロケットの打ち上げコストを劇的に引き下げることを目指しており、まずはロケットの第1段を再使用することを計画している。その前段階として、これまでにロケットの第1段を大西洋上に着水させる試験を何度か行っている。

今回ロケットが降り立つ予定のプラットフォームは、Autonomous spaceport drone shipと呼ばれており、その名の通り、無人で自律して航行することができ、またGPSを使用した位置制御システムを持ち、嵐の中でも指定した位置に3m以内の誤差で滞在し続けることができるという。ロケットが降り立つ甲板は91m x 30mの広さを持っており、また幅は最大52mまで拡張させることができ、将来的には推進剤の再補給などもできるようになるという。

また、降下時の第1段をより正確に制御するため、今回のファルコン9の第1段には小型の安定翼(フィン)が装着されることになった。これまでの着水試験ではN2ガスを噴射するスラスターを使って姿勢を制御していたが、それのみでは制御には不十分であったという。

フィンは、よくある翼の形ではなく、ロシアのロケットで見られるような格子状をしており、第1段機体の周囲に90度間隔で4枚装備されている。このフィンは打ち上げ時には折り畳まれており、再突入後に展開され、第1段のピッチ角、ヨー角、ロール角を制御するという。この格子状フィンによる制御はすでに、垂直離着陸ロケット実験機のファルコン9-R試験機で試験が行われている。

同社のイーロン・マスクCEOによれば、第1段の回収試験は一発で成功するとは考えておらず、今回成功する確率も50%ほどだと見ているという。

スペースX社では今年、10機以上のファルコン9を打ち上げることをを計画しているが、そのうち1回の打ち上げでは、その以前の打ち上げで使用された第1段を整備して再使用することになるだろうとし、それが実現する確率は80%以上と見込んでいるという。

 

■SpaceX to Determine Next Launch Opportunity | SpaceX
https://blogs.nasa.gov/spacex/2015/01/06/spacex-to-determine-next-launch-opportunity/