ロシア連邦宇宙局(ロスコスモス)は9月1日、宇宙での実験を終え、宇宙実験衛星フォトンM 4号機の帰還カプセルが地球に着陸したと発表した。しかし機内に乗っていたヤモリはすべて死亡していた。
フォトンM 4号機の帰還カプセルは、モスクワ時間2014年9月1日13時18分(日本時間2014年9月1日18時18分)、ロシア南部のオレンブルクの草原地帯に着陸した。着陸時刻や場所はほぼ予定通りで、帰還は成功したものの、中に乗っていた5匹のヤモリはすべて死亡していたという。死亡の原因については現在調査中である。
フォトンMはTsSKBプラグリェース社が開発した衛星で、様々な実験装置を搭載し、宇宙空間で実験ができるようになっている。また球形の帰還カプセルを持ち、実験の成果を地球に持ち帰ることが可能だ。実験にはロシアとドイツの研究機関が参加し、機内にはヤモリや植物の種、微生物や、半導体、材料素材などが搭載されている。打ち上げ時の質量は6,840kg、そのうち科学機器は850kgを占め、さらにそのうちの600kgが地球へ持ち帰られた。
フォトンM 4号機はソユーズ2.1aロケットに載せられ、現地時間2014年7月19日2時50分(日本時間2014年7月19日5時50分)、カザフスタン共和国にあるバイコヌール宇宙基地の31/6発射台から打ち上げられた。ロケットは順調に飛行し、約8分後にフォトンM 4号機を所定の軌道へと送り込んだ。
だが、軌道を数周した後、地上との通信に問題が発生した。衛星からの通信(ダウンリンク)は送られてくるものの、地上から送る通信(アップリンク)に反応しなくなってしまったのだ。技術者による対応の結果、ロスコスモスは26日に「同日8時5分(モスクワ時間)に通信の回復に成功」と発表し、また28日には衛星が正常な状態にあることが発表された。
さらに、本来なら打ち上げの3日後に、高度575kmの円軌道に乗り移る予定だったが、この問題により実施できず、ロケットからの分離直後と同じ、高度251 x 549kmの軌道を回り続ける羽目に陥った。この軌道では、大気との抵抗のため、軌道の擾乱によって重力勾配や加速度にわずかに変化が発生することから、宇宙実験には適していない。またそもそも環境が想定と異なってしまうという問題もある。
だが7月29日には、改めて軌道を上昇させることはせず、今の軌道のままで運用を続けることが決定されたと報じられた。併せて、それによる実験への影響はないことも発表された。
しかし、8月1日にロスコスモスのオスターペンコ長官は、22種類すべての実験装置が起動されることは認めたものの、ある1つの実験に関しては、当初予定していた軌道で行う必要があった(つまり現在の軌道では有意なデータが取れない)ことを明かした。またオスターペンコ長官はこの時、ミッション期間は当初の予定通り2ヶ月間行われると述べていたが、それもまた覆され、44日間で地球に帰還することになった。その理由については明らかにされていない。
搭載されていた機器による実験が、どの程度の成果を出したかは今後明らかにされるだろうが、予定よりも早い帰還や、ヤモリがすべて死亡といった事実を考えると、少なくとも成功とは言いがたいミッションになったことは間違いないだろう。
今回打ち上げられたのはフォトンMの4号機となるが、これまでの1号機から3号機と異なり、太陽電池パドルを装備し(従来は内臓バッテリー)、また機械船部分も、偵察衛星や地球観測衛星で使われるヤンターリのものが使われている。これにより、軌道上での滞在可能期間が、最大で6ヶ月間まで延びている。
外見からも分かるように、フォトンMはヴォストーク宇宙船を祖先に持つ。ヴォストークは1960年に登場し、無人の試験機コラーブリ・スプートニクとして7機が打ち上げられた。そして1961年4月12日、ユーリ・ガガーリンを乗せ、人類初の有人宇宙飛行を成し遂げる。ヴォストークは計6機が打ち上げられ、また3名の人間が乗れるようにしたヴォスホート宇宙船も登場した。
さらにそこから派生する形で、偵察衛星のゼニートや、地球観測衛星のレスルースやヤンターリといった種類も造られた。人間の代わりにカメラを搭載して打ち上げ、軌道上から地球を撮影した後、カプセルでカメラとフィルムを回収するという仕組みだ。また1973年にはカプセルに生物を載せて実験を行うビオンが造られ、さらに1985年には微小重力環境下での実験を行うフォトンが生まれた。本家ヴォストークが引退してもなお、再突入カプセルが安価で信頼性が高いことが好まれ、現代まで使われ続けている。
フォトンは1985年に1号機が打ち上げられ、1999年までに12号機まで打ち上げられた。後継機のフォトンMは2002年に1号機が造られたが、ロケットが爆発し打ち上げは失敗。2005年に2号機が打ち上げられ、これは成功した。2007年には3号機も打ち上げられている。
今回打ち上げられたのは4号機となるが、これまでの1号機から3号機と異なり、太陽電池パドルを装備し(従来は内臓バッテリー)、また機械船部分も、偵察衛星や地球観測衛星で使われるヤンターリのものが使われており、軌道上での滞在可能期間が、最大で6ヶ月間まで延びている。
フォトンM 5号機は2015年に打ち上げられる予定だが、今回起きた問題への対処のため、若干延びる可能性はある。
■О состоянии биообъектов, находившихся на борту «Фотон-М» № 4
http://www.federalspace.ru/20885/