米国のシエラ・ネバダ社は2014年7月23日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)との間で、同社が進めている有人宇宙船ドリーム・チェイサーの開発で協力するという内容の了解覚書を締結したと発表した。
ドリーム・チェイサーは現在、オバマ政権と米航空宇宙局(NASA)が進める、地球低軌道向けの人間や貨物の輸送を民間に解放するという取り組みに挑んでいる宇宙船の一つだ。外見はスペースシャトルを小さくしたような姿をしており、最大で7名の乗員を乗せ、国際宇宙ステーション(ISS)に送り込むことができる。打ち上げはアトラスVロケットの先端に載せられ、帰還時はやはりスペースシャトルのように滑空して滑走路へ着陸する。また再使用も可能だ。初打ち上げは2016年11月に予定されている。
今回シエラ・ネバダ社が発行したプレス・リリースによれば、日本が持つ技術をドリーム・チェイサーの開発に生かし、またJAXAへ打ち上げ機会を提供するといった可能性が語られている。
日本は過去に、HOPEやHOPE-Xの検討、HYFLEXやHSFDの飛行実験などを行ったことがあり、有翼の宇宙往還機の開発に必要な技術をある程度持っていることから、ドリーム・チェイサーの開発に役立つ部分もあろう。
また、日本は宇宙飛行士を擁してはいるものの、独自の宇宙船は持っていないため、国際宇宙ステーション計画が終了した後、これまでのように宇宙飛行の機会がやってくるかは心許ない見通しだ。もしドリーム・チェイサーによってその手段が確保できるとなれば、その意義は大きい。
さらに、同社スペース・システムズのMark N. Sirangelo副社長は「日本は米国のように、自国内にドリーム・チェイサーの打ち上げと帰還をサポートする基盤が整っている」と語り、日本からドリーム・チェイサーを打ち上げ、帰還させることにも期待を示した。
しかしJAXAによれば、どういった技術で協力するか、また、どのような協力になるのか、あるいは本当に日本からドリーム・チェイサーを打ち上げるのかどうかなど、現段階ではまだ何も決まっておらず、将来の技術協力に向けた話し合いを開始するという段階とのことであった。
オバマ政権とNASAが進める、地球低軌道向けの人間や貨物の輸送を民間に解放するという政策は、現在すでに無人補給機は実用化されており、スペースX社のドラゴンと、オービタル・サイエンシズ社のシグナスが、実際に補給ミッションを担うまでになった。
一方有人宇宙船では、現在CCiCap(Commercial Crew integrated Capability)と名付けられたプログラムが進行中で、ドリーム・チェイサーはボーイング社のCST-100と、スペースX社のドラゴンV2としのぎを削っている。
NASAは民間による宇宙船の開発に対して、定められた基準をクリアするごとに資金提供を行う段階的な仕組みを設けている。有人宇宙船の開発ではCCDev(Commercial Crew Development)と名付けられた計画の下で進められており、CCiCapはその第3ラウンドとなる。
2012年8月には、米国の7社から寄せられた提案の中から、シエラ・ネバダ社とボーイング社、スペースX社が選ばれ、資金提供を実施。現在も開発は続いており、7月現在、ドリーム・チェイサーの開発は13項目設定されたマイルストーンのうち、10項目までクリアしている。またCST-100は18/20、ドラゴンV2は13/18をクリアしている。
この3機は現在も、順調に開発と試験、そしてNASAからの評価が続けられており、どれが選ばれてもおかしくない状況だが、資金に限りがあることから、最終的に1社か2社に絞られ、次のフェーズに移る予定だ。その発表は、今年8月にも行われる予定だ。
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