米航空宇宙局(NASA)は6月27日、通算14回目となるオリオン宇宙船のパラシュート・システムの試験に成功した。今回の試験は、今年12月に予定されているオリオンの初打ち上げ前最後にして、これまででもっとも複雑かつ困難なものであった。一方で、実際に12月に打ち上げられる宇宙船の製造も順調に進んでおり、NASAの次期宇宙船のデビューの時が刻一刻と迫っている。
オリオンの試験機はC-17輸送機に載せられ、アリゾナ州にある米陸軍のユマ試験場の上空、高度約11kmまで運ばれ投下された。オリオンにとってこれほどの高度からのパラシュート試験は初めてのことだ。そして約10秒間自由落下し、実際の帰還時に近いスピードと、空気抵抗の状況を作り出した。
オリオンのパラシュート展開は、大きく3つの段階に分かれている。まずフォワード・ベイ・カバーと呼ばれる覆いが小型パラシュートによって投棄され、パラシュート部分を露出。続いてドローグ・パラシュートと呼ばれる、小さな傘を持ったパラシュートによって降下スピードを落としつつ船体を安定させ、そして3段階目として、このドローグ・シュートに引っ張られメイン・パラシュートが展開された。このメイン・パラシュートは直径が35mもあり、合計3つ装備されている。3つの大きな傘を広げたオリオンは、無事にアリゾナの大地の上に降り立った。
ただし今回は、3つのうち1つのメイン・パラシュートを、わざと2つ目の段階を抜かして展開させた。これは緊急時に、ドローグ・シュートを使わずにメイン・パラシュートを展開させる試験のためだ。
今回の試験は、全部で17回計画されている空中投下試験の14回目で、また今年12月に予定されている、探検飛行試験1(EFT-1: Exploration Flight Test 1)と名付けられたオリオンの初打ち上げ前の、最後の試験でもあった。
NASAジョンソン宇宙センターでオリオン計画の責任者を務めるマーク・ガイヤー氏は「年末に予定しているEFT-1の前に、私たちは地球上で可能な、おおよそ考えられるすべての方法でパラシュートと能力を試しました。これらの試験により、性能が折り紙付きであることは間違いなく、確実かつ安全なミッションの提供を保障できるでしょう」と述べている。
EFT-1は大型の人工衛星の打ち上げに使われているデルタIVヘビーロケットに、無人のオリオンを搭載して打ち上げ、地球周回軌道を2周した後、大気圏に再突入し、太平洋に着水する計画だ。最大高度は約6,000km、大気圏再突入時の速度は秒速約9kmにまで達する。この試験により、オリオンの電子機器や耐熱システム、パラシュートなどが設計通り機能するかが試験される。
当初このEFT-1は、今年の9月に予定されていたが、米空軍の軍事衛星の打ち上げが優先されたため、12月に延期されることになった。
■Parachutes for NASA's Orion Spacecraft Hit No Snags in Most Difficult Test | NASA
http://www.nasa.gov/press/2014/june/parachutes-for-nasas-orion-spacecraft-hit-no-snags-in-most-difficult-test/