ロシアのプログレスM-19M補給船が11日、15日に予定されているATV-4アルベルト・アインシュタインのドッキングに備え、国際宇宙ステーション(ISS)から出港した。
プログレスM-19Mは4月24日に打ち上げられ、予定の軌道には乗ったものの、ISSへのドッキング時に使用するアンテナの一つが展開できないという問題に見舞われた。しかし計画通り4月26日にドッキングを強行し、その結果展開できなかったアンテナがISSの部品に接触し、損傷を与えた可能性が指摘されていた。
損傷した可能性のある部品というのは、欧州の補給船ATVがISSへの接近時に使用するレーザー反射鏡で、プログレス補給船を製造しているRKKエネルギヤ社などはドッキングの前からその可能性を否定しており、また実際のドッキング時にも何かとぶつかるような異音は聞かれなかったものの、しかしながらアメリカ航空宇宙局(NASA)などは疑いを抱き続け、調査の必要性を訴えていた。
しかしレーザー反射鏡は船外活動を行わない限り状況を確かめることができない場所にあり、またそのためだけに船外活動を行うとなると、予定されているISSの運用スケジュールに影響を与えてしまうことから結局は見送られ、プログレスM-19Mの分離時に同機に搭載されているカメラを使って当該部分を撮影、また同時にISS側からもプログレスを撮影し、状況が確認されることとなった。
プログレスM-19Mはほぼ予定通りの、日本時間11日22時58分13秒に、ISSのズヴェズダ・モジュールの後部ポートから離脱した。ところがその際、展開できなかったアンテナが開き、またおそらくその反動で若干船体が揺らされたことが確認された。プログレスはすぐに体勢を立て直し、分離の3分後にスラスターを噴射、ISSから完全に出港した。
なぜアンテナが開いたかはまだ明らかになっていないが、しかしRKKエネルギヤ社などはアンテナが接触する可能性を否定しており、またNASAも、万が一ドッキングしている状態でアンテナが開いてしまったとしても、ISSの部品とは2mmの隙間があり、接触は回避できるだろうと判断していると明かしたことからも、アンテナが展開したのは単に分離時の衝撃によるもので、例えば何かの部品と引っかかっていて、分離によって外れた、などといったことではないようだ。また分離に伴うデブリの発生なども確認されていない。
現在プログレス側、ISS側から撮影された映像・画像をもとに解析が進められており、ATV-4アルベルト・アインシュタインのドッキングまでには何らかの結果が出されるだろう。
そのATV-4は現時点で15日の22時46分10秒(日本時間)にISSの、まさにプログレスM-19Mがドッキングしていた箇所へドッキングする予定だ。そもそもATVがドッキングできるのはこのポートだけだ。
問題のレーザー反射鏡が使われるのはISSとの距離が約243mになった地点からであり、もし万が一レーザー反射鏡が使用できず、ドッキングできないことが分かった場合には、ATVを待機軌道に移し、緊急の船外活動で反射鏡を交換する予定となっている。すでに予備のレーザー反射鏡は、先日ISSにドッキングしたソユーズTMA-09M宇宙船によって輸送されている。また11日夜には、ATVの衝突回避試験を行うことも決定された。
一方、プログレスM-19Mはしばらく単独飛行をし、15日からはロシア科学アカデミーが実施する電離層の観測実験ラダール・プラグリェース(レーダー・プログレス)のために供される予定となっている。その後、6月19日に逆噴射を行い軌道を離脱、大気圏に再突入する予定となっている。船体の大半は燃え尽き、わずかに残った残骸も太平洋上に落下する見込みだ。
■NASA - ISS Daily Summary Report - 06/11/13
http://www.nasa.gov/directorates/heo/reports/iss_reports/2013/ISS_Daily_Summary_Report__061113.html