スペースXは日本時間2024年2月15日、アメリカの民間宇宙企業インテュイティブ・マシーンズ(Intuitive Machines)の月着陸ミッション「IM-1」の月着陸船「Nova-C」を搭載した「ファルコン9」ロケットの打ち上げに成功しました。【最終更新:2024年2月16日12時台】
Nova-Cを搭載したファルコン9は日本時間2024年2月15日15時5分(米国東部標準時同日1時5分)、米国フロリダ州のケネディ宇宙センター39A射点から打ち上げられました。スペースXによると、Nova-Cは発射約48分後に月遷移軌道(LTO:lunar transfer orbit)へ投入されたということです。なお、打ち上げに使用されたファルコン9の第1段機体は18回目の使用で、発射7分40秒後にケープカナベラル宇宙軍基地の着陸エリアへ帰還しました。
Nova-Cによる月着陸ミッション「IM-1」はインテュイティブ・マシーンズ初の月着陸ミッションです。着陸船は「Odysseus(オデュッセウス)」と命名されており、アメリカ航空宇宙局(NASA)の商業月輸送サービス(CLPS)の下で選定された5つのペイロードとNASAの6つのペイロードを搭載しています。
IM-1の着陸目標地点は月の南極域にあるマラパートA・クレーター(Malapert A)です。Nova-Cが着陸に成功した場合、インテュイティブ・マシーンズは月面着陸に成功した初の民間企業となります。海外メディアのSpaceNewsによると、Nova-Cの月面着陸は米国東部標準時2024年2月22日午後に予定されているということですが、月周回軌道への投入や月面着陸といったマイルストーンで予定されている正確な日時はインテュイティブ・マシーンズからは公開されていません。
インテュイティブ・マシーンズによると、Nova-Cとの最初の通信はロケットから分離された数分後の日本時間2024年2月15日15時59分に確立されました。打ち上げ約8時間後に発表された同社のプレスリリースでは、米国ヒューストンにある同社のミッション運用センターがNova-Cとの通信に成功し、機体の安定した姿勢や太陽電池によるバッテリーの充電が確認されたと述べられています。
日本時間2024年2月16日9時55分に同社から発表された最新情報によると、当初Nova-Cに搭載されているスタートラッカー(※)のデータに予想をやや上回る誤差が含まれており、誘導システムがスタートラッカーのデータを拒否していたものの、修正プログラムを送信しアップデートを実施したことで通常の運用が再開されました。発表時点でのNova-Cの状態は引き続き良好だということです。
※…星の位置を観測して宇宙機の位置を決めるための装置。
SpaceNewsによると、次の重要なマイルストーンは打ち上げから約18時間後に予定されているメインエンジンの試運転です。インテュイティブ・マシーンズも先述の最新情報にて試運転の準備を進めていると述べています。同社が開発したメインエンジンは推進剤に極低温のメタンと液体酸素を使用しており、月周回軌道への投入や月面着陸で使用されます。
揮発による損失を抑えるためにNova-Cへの推進剤充填は打ち上げの数時間前から発射台上で行う必要があったため、スペースXは同じくメタンと液体酸素を使用する大型宇宙船「スターシップ」のノウハウも利用して新たな推進剤供給システムと手順を設計したということです。なお、IM-1のNova-Cは当初日本時間2024年2月14日に打ち上げられる予定でしたが、打ち上げ約90分前に搭載中のメタンの温度に異常が生じたため1日延期されていました。
関連記事:インテュイティブ・マシーンズ、月着陸ミッション「IM-1」の打ち上げを2024年2月14日以降実施 民間初成功なるか(2024年2月8日)
Source
- SpaceX - INTUITIVE MACHINES IM-1 MISSION
- Intuitive Machines - IM-1 Mission Nova-C Lunar Lander Successfully Enroute to the Moon Following its Launch on SpaceX’s Falcon 9
- Intuitive Machines - IM-1 Mission Vehicle Health Update
- SpaceNews - Falcon 9 launches first Intuitive Machines lunar lander
- SpaceNews - Fueling issue delays Intuitive Machines lunar lander launch
文/出口隼詩 編集/sorae編集部