アメリカ航空宇宙局(NASA)と欧州宇宙機関(ESA)は9月1日、「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡によって直接撮像された太陽系外惑星の画像を公開しました。系外惑星の直接撮像はこれまでにも行われたことがありますが、ウェッブ宇宙望遠鏡による直接撮像は今回が初めてであり、系外惑星のさらなる観測に期待が寄せられています。
■355光年先の若き巨大ガス惑星を直接撮像
観測の対象となったのは「ケンタウルス座」の方向約355光年先にある恒星「HIP 65426」を公転している系外惑星「HIP 65426 b」です。こちらが公開された画像で、ウェッブ宇宙望遠鏡の「近赤外線カメラ(NIRCam)」と「中間赤外線装置(MIRI)」を使用し、それぞれ2種類ずつのフィルターを通して捉えられたHIP 65426 bの像が合計4点、画像の下段に表示されています。背景の画像は、地上の望遠鏡によって撮影されたHIP 65426とその周辺の様子です。
像の色は赤外線の波長に応じて着色されていて(紫:3.0μm、青:4.44μm、黃:11.4μm、赤:15.5μm)、各画像の「★」は親星であるHIP 65426の位置を示しています。NASAによると、HIP 65426 bの明るさは親星のHIP 65426と比べて近赤外線では1万分の1以下、中間赤外線では数千分の1と暗いため、観測時に親星からの光(赤外線)はコロナグラフを使って遮られました。また、特にNIRCamを使って取得されたHIP 65426 bの像はブレたようになっていますが、これは望遠鏡の特性によるものです。
HIP 65426 bは木星と比べて質量が6~12倍、直径が16~18倍の巨大ガス惑星と推定されています。この惑星系はまだ若く、HIP 65426 bは形成されてからまだ1500万~2000万年しか経っていないと考えられています。親星からは100天文単位(※)近く離れていることから、ウェッブ宇宙望遠鏡はHIP 65426 bの像を比較的簡単に分離することができたといいます。今回の観測結果は、より正確なHIP 65426 bの質量を知る上で役立つ可能性があるようです。
※…1天文単位(au)=約1億5000万km、太陽から地球までの平均距離に由来。100天文単位は太陽から冥王星までの平均距離(約40天文単位)の2.5倍に相当する。
冒頭でも触れたように系外惑星が直接撮像されたのは今回が初めてではなく、過去にはヨーロッパ南天天文台(ESO)の「超大型望遠鏡(VLT)」などによって撮像されたことがあります。また、今回の観測と画像の解析を行ったAarynn Carterさん(カリフォルニア大学サンタクルーズ校)を筆頭とする研究チームの論文は、画像の公開時点ではまだプレプリントの段階です。
それでも今回公開された画像は、系外惑星を容易く捉えるウェッブ宇宙望遠鏡の能力と、系外惑星についての情報がこれまで以上に明らかになる将来の観測を示しているとNASAは解説しています。今回の研究チームに参加し、観測を主導したSasha Hinkleyさん(エクセター大学)は「これはウェッブ宇宙望遠鏡だけでなく、天文学全般にとっても変革の瞬間です」とコメントしています。
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Source
- Image Credit: NASA/ESA/CSA, A Carter (UCSC), the ERS 1386 team, and A. Pagan (STScI).
- NASA - NASA’s Webb Takes Its First-Ever Direct Image of Distant World
- ESA/Webb - Webb Takes Its First Exoplanet Image
- Carter et al. - The JWST Early Release Science Program for Direct Observations of Exoplanetary Systems I: High Contrast Imaging of the Exoplanet HIP 65426 b from 2-16 μm
文/松村武宏