こちらは「はと座」の方向およそ3600万光年先にある渦巻銀河「NGC 1792」です。青く渦巻く星々の中心にオレンジ色に輝く中心核が埋め込まれたような姿をしています。星の色は表面温度や年齢と関係があり、渦巻くNGC 1792の全体にみられる青色の領域は若くて高温の星が豊富であることを示しています。いっぽう中心付近のオレンジ色は、古くてより低温の星が存在することを意味します。
NGC 1792は大質量星の形成が活発なスターバースト銀河としても知られています。スターバースト銀河では天の川銀河と比べて10倍以上の速度で新たな星が生み出されることもあるといいます。NGC 1792は星の材料となる水素ガスが豊富ですが、こうした銀河では別の銀河との合体や接近といった相互作用が短期間のスターバーストの引き金になることもあるようです。
大規模な星形成活動は銀河のガスから星を生み出しますが、大質量星の強力な恒星風や度重なる超新星爆発がガスを加熱し分散させ、銀河風として銀河の外にまで流出させることもあるため、すべてのガスが消費し尽くされる前にスターバーストは停止するとされています。スターバーストを促進・抑制させる複雑な相互作用を理解するための取り組みが研究者らによって進められています。
冒頭の画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡に搭載されている「広視野カメラ3(WFC3)」によって可視光線と紫外線の波長で観測されたもので、欧州宇宙機関(ESA)からハッブル宇宙望遠鏡の今週の一枚として2020年12月7日付で公開されています。
Image Credit: ESA/Hubble & NASA, J. Lee
Source: ESA/Hubble
文/松村武宏