米航空宇宙局(NASA)は7月9日、民間企業が開発した有人宇宙船に搭乗する、最初の宇宙飛行士4人を発表した。4人はこれから訓練をはじめ、2017年に予定されている打ち上げに臨む。
NASAでは現在、ISSへの物資や宇宙飛行士の輸送に、NASAやロシアのロケットや宇宙船を使うのではなく、民間企業にロケットや宇宙船の開発から運用までを委託するという計画を進めている。すでに無人の補給船については実現し、スペースX社がファルコン9ロケットとドラゴン補給船を、オービタル・サイエンシズ社がアンタレス・ロケットとシグナス補給船をそれぞれ開発し、運用を行なっている。
一方、有人宇宙船と、それを打ち上げるロケットの開発計画も進められており、これまでに3回の審査を経て、米航空宇宙大手のボーイング社と、無人補給船でも契約を獲得しているスペースX社の2社が残った。現在、ボーイング社はCST-100という宇宙船を、スペースX社はドラゴンV2という宇宙船の開発を、それぞれ進めている段階にある。
今回発表されたのは、これら民間の宇宙船に乗り込むことになる最初の宇宙飛行士で、選ばれたのはロバート・ベンケン(Robert Behnken)、スニータ・ウィリアムズ(Sunita Williams)、エリック・ボー(Eric Boe)、そしてダグラス・ハーレイ(Douglas Hurley)の4人。
この4人は全員ヴェテランの宇宙飛行士で、ベンケン飛行士はスペース・シャトルのSTS-123、STS-130で飛行し、船外活動(EVA)経験も持つ。ウィリアムズ飛行士はシャトルのほかにロシアのソユーズ宇宙船にも乗り、ISSの第32/33次長期滞在員も務めた経験を持っている。またボー飛行士はSTS-126、STS-133で飛行、そしてハーレイ飛行士はSTS-127、STS-135で飛行した経験を持つ。
今回選ばれた4人はこれから、CST-100やドラゴンV2に搭乗するための訓練を始めることになる。現時点では2017年に飛行予定ということのみが決まっており、飛行時期や搭乗員の組み合わせなどについては、具体的には決まっていない。
なお宇宙船についても、CST-100とドラゴンV2のどちらが先に打ち上げられることになるかはまだ決まっていない。ただ、CST-100のほうが開発の進捗具合や完成度などの面で評価が高いことや、ドラゴンV2を打ち上げることになっているファルコン9ロケットが、先月末に打ち上げに失敗したことなどから、現時点ではCST-100が先に打ち上げられることになるだろうとの見方が濃厚だ。
発表を行ったNASAのチャールズ・ボウルデン長官は、声明の中で次のように述べた。
「私たちは火星に向けた旅路を歩み続けています。2030年代に火星に米国人宇宙飛行士を送り込むという目標を達成するために、私たちは深宇宙と国際宇宙ステーションの両方に焦点を当てなければなりません。民間企業に宇宙飛行士の輸送を委託するという計画は、この二兎を追うことを可能にします。米国企業がISSに宇宙飛行士を送る事業に取り組んでいる一方で、私たちNASAは、深宇宙まで飛行できる『オリオン』宇宙船や、それを打ち上げるための超大型ロケット『スペース・ローンチ・システム』といった、より革新的な技術の開発に注力することができるからです」。
■NASA Selects Astronauts for First U.S. Commercial Spaceflights | NASA
http://www.nasa.gov/press-release/nasa-selects-astronauts-for-first-us-commercial-spaceflights-0