米航空宇宙局(NASA)は6月16日、熱帯降雨観測衛星「TRMM」(トリム)が米国時間15日深夜、大気圏に再突入したと発表した。TRMMは日米の共同プロジェクトとして開発され、1997年に打ち上げられた。当初の目標寿命は3年2か月とされていたが、実に17年にもわたって運用が続けられ、気候変動の研究に大きな功績を残し、その生涯を終えた。

米戦略軍(USSTRATCOM)・宇宙統合機能構成部隊(JFCC SPACE)・統合宇宙運用センター(JSpOC)による観測結果によると、再突入時刻は米東部夏時間2015年6月15日23時55分(日本時間2015年6月16日12時55分)で、場所はインド洋の南の上空であったという。

今回の再突入をめぐっては、いくつかの部品が燃え残り、4200分の1の確率で人に当たる確率もあるとされていた。実際にはすべて燃え尽きたか、あるいは燃え残った部品もすべて海に落ちたと考えられ、また今のところ、何らかの被害が出たとの報告はない。

TRMMは日米の共同プロジェクトで、日本側が打ち上げロケットの提供と降雨レーダーの開発を担当し、NASAが衛星本体、降雨レーダー以外の4つの観測機器の開発、衛星の運用を担当した。1997年11月28日に種子島宇宙センターからH-IIロケット6号機によって打ち上げられ、当初の目標寿命である3年2か月を大幅に超えて運用が続けられた。

しかし、2014年7月には、衛星内の燃料がなくなったことで軌道高度の維持ができなくなり、大気との抵抗によって徐々に高度を下げていた。観測機器は生きていたため、引き続き観測は続けられたものの、やがて観測が可能な高度をも下回ったことから、2015年4月8日には観測機器が停止され、正式にミッションの終了が宣言された。

TRMMは、地球の全降雨量の約3分の2を占める熱帯地域の降雨を観測し続け、降水に関する様々な新しい知見をもたらし、そのデータは天気予報の精度向上や、台風の進路や強度予測、異常気象や地球温暖化などの大規模な気候変動の仕組みの解明に役立てられ、現在もそのデータは利用され続けている。

また、2014年2月28日には、TRMMの後継機となる全球降水観測計画「GPM」がH-IIAロケットで打ち上げられ、現在順調に観測を続けている。

 

■Rainfall Spacecraft Re-enters Over Tropics | NASA
http://www.nasa.gov/feature/rainfall-spacecraft-re-enters-over-tropics