欧州宇宙機関(ESA)とアメリカ航空宇宙局(NASA)は2024年5月16日付で、ESAの火星探査計画「ExoMars(エクソマーズ)」における火星探査車「Rosalind Franklin(ロザリンド・フランクリン)」のミッションに関する覚書に署名したことを発表しました。【最終更新:2024年5月21日11時台】
火星探査車「ロザリンド・フランクリン」とは
ロザリンド・フランクリンは、かつて火星に存在していた、あるいは今も存在するかもしれない生命の痕跡の探索を目的として開発された探査車です。放射線やきびしい温度環境から保護されているとみられる地下2mからサンプルを採取するためのドリルをはじめ、ラマン分光装置、赤外線ハイパースペクトルカメラ、有機分子分析装置などが搭載されています。着陸目標地点はマリネリス渓谷の北東に位置するオクシア平原(Oxia Planum)です。
エクソマーズはESAおよびロシアの国営宇宙企業ロスコスモス(Roscosmos)の共同計画として進められてきました。ロザリンド・フランクリンはロシアの着陸機「Kazachok(カザチョク)」に搭載され、エクソマーズ2回目のミッション「ExoMars 2022」として2022年9月に打ち上げられる予定でしたが、同年2月に始まったウクライナ侵攻の影響を受けて打ち上げは中止され、ESAはロザリンド・フランクリンを火星へ送り込むための代替案を検討していました。
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「ロザリンド・フランクリン」ミッションで、ESAとNASAが協定
今回両機関が合意したのは、ロザリンド・フランクリンのミッションにおけるESAとNASAの取り組みを拡大する協定です。この合意により、NASAはロザリンド・フランクリンの打ち上げサービス、着陸に必要となる推力可変機能を備えたロケットエンジン、それにアメリカ合衆国エネルギー省(DOE)との協力の下で放射性同位体を用いたヒーターをESAに提供します。
ESAはカザチョクに代わる着陸機を調達するためにヨーロッパの民間宇宙企業Thales Alenia Space(タレス・アレニア・スペース)と契約を締結しており、エンジンやヒーターは開発中の着陸機に搭載されます。また、ロザリンド・フランクリンを載せた着陸機を火星へ送るための打ち上げサービスプロバイダーもNASAがアメリカで調達することになります。
もともとエクソマーズはESAとNASAが共同で取り組む予定だったものの、NASAが脱退した後にロシアとの共同体制で進められてきたという経緯があります。ESAとNASAの協力が拡大したことで火星に向けて一歩前進したロザリンド・フランクリンは、2028年10月~12月の期間内にアメリカから打ち上げられる予定です。
Source
- ESA - ESA and NASA join forces to land Europe’s rover on Mars
- ESA - ESA to search for life on Mars with ExoMars Rosalind Franklin mission
- NASA - NASA, European Space Agency Unite to Land Europe’s Rover on Mars
- Thales Alenia Space - The search for life on Mars goes on with ExoMars 2028
- SpaceNews - NASA and ESA complete agreement for cooperation on Mars rover mission
- 月探査情報ステーション - エクソマーズ (ExoMars)
文・編集/sorae編集部