米航空宇宙局(NASA)は6月12日、熱帯降雨観測衛星「TRMM」(Tropical Rainfall Measuring Mission)について、6月16日に大気圏に再突入する見通しだと発表した。燃え残った部品が地表に落下する可能性もわずかながらあるするという。
これは米戦略軍(USSTRATCOM)・宇宙統合機能構成部隊(JFCC SPACE)・統合宇宙運用センター(JSpOC)の予測によるもので、再突入日時は日本時間6月16日17時59分ごろとのことである。今後も随時、最新の予測を提供していくとしているが、大気の変動などの自然現象に左右されることから、正確な再突入日時や、場所については予測することは不可能である。
また、衛星の大半は再突入時の熱で燃え尽きるものの、チタンなど熱に強い素材で造られている部品は燃え残り、地上に落下する可能性もあるという。NASAの予測によると、燃え残る可能性のある部品の数は12個で、地表に落下し、なおかつ人に当たる確率は約4200分の1だという。落下地域の予測は不可能だが、TRMMは軌道傾斜角(軌道からの傾き)が35度の軌道を回っているため、北緯35度から南緯35度の間のどこかに落下することになる。
TRMMは日米の共同プロジェクトで、日本側が打ち上げロケットの提供と降雨レーダーの開発を担当し、NASAが衛星本体、降雨レーダー以外の4つの観測機器の開発、衛星の運用を担当した。1997年11月28日に種子島宇宙センターからH-IIロケット6号機によって打ち上げられ、当初の目標寿命である3年2か月を大幅に超えて運用が続けられた。
しかし、2014年7月には、衛星内の燃料がなくなったことで軌道高度の維持ができなくなり、大気との抵抗によって徐々に高度を下げていた。観測機器は生きていたため、引き続き観測は続けられたものの、やがて観測が可能な高度をも下回ったことから、2015年4月8日には観測機器が停止され、正式にミッションの終了が宣言された。
TRMMは、地球の全降雨量の約3分の2を占める熱帯地域の降雨を観測し続け、降水に関する様々な新しい知見をもたらし、そのデータは天気予報の精度向上や、台風の進路や強度予測、異常気象や地球温暖化などの大規模な気候変動の仕組みの解明に役立てられ、現在もそのデータは利用され続けている。
また、2014年2月28日には、TRMMの後継機となる全球降水観測計画「GPM」がH-IIAロケットで打ち上げられ、現在順調に観測を続けている。
■Rainfall Spacecraft Debris to Re-enter Over Tropics | NASA
http://www.nasa.gov/feature/rainfall-spacecraft-debris-to-re-enter-over-tropics