シエラ・ネヴァダ社は3月17日、かねてより開発を行っている有翼の有人宇宙船「ドリーム・チェイサー」を貨物専用機にした「ドリーム・チェイサー・カーゴ・システム」を発表した。米航空宇宙局(NASA)が計画する国際宇宙ステーションへの第2回商業補給サーヴィス契約の獲得を狙うという。
ドリーム・チェイサーはシエラ・ネヴァダ社が開発を進めている有人宇宙船で、小さいながらも翼を持ち、スペースシャトルのように宇宙から滑走路に着陸し、何度も再使用することができる機体だ。
今回発表された補給船版のドリーム・チェイサーは、有人宇宙船版とは大きく設計が変わっている。例えば従来はアトラスVロケットの先端にむき出しの状態で搭載される設計だったが、翼を折り畳めるようにしたことで、アトラスV以外のロケットのフェアリング内に搭載できるようになっている。また、後部には貨物専用のモジュールを持ち、ドリーム・チェイサー内部の収容スペースと合わせ、与圧・非与圧両方の貨物が搭載できるようになっている。
ロケットエンジンに無毒なハイブリッド・ロケットを採用している点も有人宇宙船版と同じで、またスペースシャトルのように帰還時に滑空して飛行して滑走路に着陸でき、再使用が可能な点点もまた同じだ。これによりステーションの実験で生み出された成果物を地球に持ち帰ることができ、また再突入時にかかる重力加速度は1.5Gと小さいため、成果物に与える影響も小さく抑えられる。
NASAは現在、商業補給サービス(CRS)と呼ばれる、国際宇宙ステーションへの物資の補給を民間企業に委託するプロジェクトを進めている。これまでにスペースX社が5回、オービタルATK社が3回(うち1回は失敗)、NASAとの契約に基づいて、補給ミッションを行っている。現在進行中のこの第1回の契約(CRS-1)は2016年までが期限とされており、2017年以降はまた新たに委託先が選定され、契約が結びなおされることになっている。現時点でこの第2回の契約(CRS-2)には、CRS-1に引き続いてスペースX社とオービタルATK社が名乗りを挙げており、またボーイング社もCST-100宇宙船の貨物機版を、そしてロッキード・マーティン社もエクソライナーとジュピターという機体を提案している。
シエラ・ネヴァダ社のMark N. Sirangelo副社長は「(この機体は)NASAによる提案にあるすべての基準を超える能力を持つシステムです」と語る。
ドリーム・チェイサーは、かつてNASAが国際宇宙ステーションからの緊急帰還用として開発を進めていた「HL-20」という宇宙船を源流に持ち、それを米国の同社(当時はスペース・デヴ社)が2004年に買い取り、ドリーム・チェイサーと名を変えて開発を続けているという経緯を持つ。同社がこの機体を引き取った当時、米国政府とNASAは国際宇宙ステーションへの物資や宇宙飛行士の輸送を、民間企業が開発した宇宙船に外注する方針を立てており、シエラ・ネヴァダ社はこれにドリーム・チェイサーを売り込んでいた。実際にNASAからの発注が行われるまでには、ラウンド形式でいくつかの審査があり、ドリーム・チェイサーはその最終候補まで残ったものの、最終的に破れている。その後同社は単独で開発と売り込みを続けていた。
■Sierra Nevada Corporation Unveils New Dream Chaser... | Sierra Nevada Corporation's Space Systems
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