米航空宇宙局(NASA)は1月9日、ミシシッピ州にあるステニス宇宙センターにおいて、開発中の超大型ロケット「スペース・ローンチ・システム」の第1段ロケットエンジンに採用される予定の、RS-25ロケットエンジンの燃焼試験を実施した。

エンジンはステニス宇宙センターにあるA-1と呼ばれる試験台に取り付けられ、約500秒にわたって燃焼し、無事に完了した。

RS-25は液体水素と液体酸素を推進剤とするロケットエンジンで、かつてはスペースシャトルのメインエンジン(SSME)として使われていたものだ。しかし、スペースシャトルとスペース・ローンチ・システムでは作動環境に大きな違いがある。

例えば、スペースシャトルはRS-25を3基並べて装着していたが、スペース・ローンチ・システムでは4基並べることになるため、それぞれのノズルが受ける温度は高くなる。また加速が大きくなるため、推進剤がエンジンに流れ込む際の圧力もシャトルに比べて高くなる。さらにエンジンに流れ込む液体酸素の温度もより低くなっている。今回試験されたRS-25は、そうした変化に合わせた改修が施されたものだ。

スペースシャトル計画の下でRS-25の燃焼試験が行われたのは2009年が最後で、今回はそれ以来初の燃焼試験でもあった。

NASAによれば、このあとA-1試験台は、周囲に水を撒く冷却システム(ウォーター・カーテン)に改良が加えられるという。試験が再開されるのは今年4月からで、開発用エンジンを使い、8回に分けて、累計3,500秒間にわたる燃焼試験が実施されるという。

さらに別の開発用エンジンを用いて、10回・累計4,500秒間にわたる燃焼試験も行われる予定で、また合わせて、新しい制御装置の試験も実施されるという。

スペース・ローンチ・システムは現在NASAとボーイング社によって開発が進められているロケットで、完成すれば歴史上最も強力な打ち上げ能力を持つロケットになる。

ロケットは打ち上げ能力70tの構成と、130tの構成の、大きく2種類が開発される予定になっている。まず最初に開発されるのは70t構成の機体で、大型の無人探査機を火星や小惑星に送ったり、宇宙飛行士を乗せたオリオン宇宙船を地球低軌道や月、地球近傍小惑星に送り込むことが可能になる。そして2030年ごろには130t構成の機体が完成する予定で、実現すれば史上最大の打ち上げ能力を持つロケットになり、いよいよ火星や小惑星への有人着陸が視野に入る。

スペース・ローンチ・システムは基本的にスペースシャトルから部品を流用して構築される。例えばコア・ステージと呼ばれる第1段のタンクは、スペースシャトルの外部タンク(ET)を改修されたものが用いられ、ロケットエンジンもスペースシャトルに使われていたRS-25が装備される。その両脇に装着されるブースターも、やはりスペースシャトルで使われていた固体ロケット・ブースター(SRB)を流用し、セグメント数を増やしてパワーアップしたものだ。

コア・ステージの上部には、ミッションの目的や打ち上げるものの大きさ、質量に応じて用意された、何種類かの上段を搭載する。これらのバリエーションはそれぞれブロックIやブロックIAといった呼び名が付けられており、さらに有人宇宙船を搭載する型や、貨物のみを搭載する型にも分かれている。

ただ、第1段のエンジンは、いずれは設計を簡略化したRS-25Eに切り替えられる予定で、またSRBも、いずれは液体燃料ロケットを使ったブースターに切り替えるといった発展性が計画されている。

スペース・ローンチ・システムの開発が予定通りに計画が進めば、2018年11月ごろに無人のオリオン宇宙船を載せて、試験打ち上げが行われる予定だ。またその2年後には有人のオリオン宇宙船の打ち上げが実施され、そして2030年代中には、火星への有人飛行が実現する計画となっている。

 

■RS-25 Engine Testing Blazes Forward for NASA's Space Launch System | NASA
http://www.nasa.gov/press/2015/january/rs-25-engine-testing-blazes-forward-for-nasas-space-launch-system/#.VLB_RyvF-Ag