ロシア航空宇宙防衛部隊(VVKO)は12月25日、軍事衛星を搭載したソユーズ2.1bロケットの打ち上げに成功した。VVKOやロシア連邦宇宙局(ロスコスモス)、国営ノーヴォスチ通信などはこの衛星を通信衛星であると発表したが、実態は電子偵察(ELINT)衛星ロータスSであるという見方が濃厚だ。
ロケットはモスクワ時間2014年12月25日6時1分(日本時間2014年12月25日12時1分)、ロシア・アルハーンゲリスク州にあるプレセーツク宇宙基地の43/4発射台から離昇した。打ち上げ後、VVKOやロスコスモスなどは、打ち上げ成功との声明を発表した。
その後、米軍の宇宙監視ネットワークによって、近地点高度210km、遠地点高度930km、軌道傾斜角67.2度の軌道に、この衛星とロケットの第3段と思われる物体が捉えられている。
VVKOやロスコスモス、またロシア国営のノーヴォスチ通信などは、この衛星を通信衛星であると発表した。しかし多くの専門家は、レーダーや通信、電子戦機器などから出る電波を傍受する電子情報(ELINT)偵察衛星ロータスSの2号機ではないか、と見ている。ELINTは、例えば仮想敵国の艦艇や地上施設のレーダーが使用する電波の周波数などを傍受し、分析する諜報活動のことを指す。ELINTによってそのレーダーの種類や特性などが分かり、いざというときに裏をかいたり、妨害することが可能になる。
ロータスSは、衛星バスをRKTsプラグリェース社が、搭載機器をKBアルセナール社が開発を担当した。KBアルセナール社の資料によれば、打ち上げ時の質量は6tであるという。
ロータルSは2009年11月20日に1号機が打ち上げられている。軌道は高度900km、軌道傾斜角67.2で、おそらく今回の2号機も、今後現在の軌道から、1号機と同じ高度の軌道へ乗り移るものと見られる。またロシアの軍事衛星には、伝統的にコスモス番号と呼ばれる「kosmos-xxxx」という名前が与えられており、ロータスSの1号機はコスモス2455と呼ばれているが、今回の2号機にはまだコスモス番号が与えられた形跡はない。仮に与えられるとすれば、コスモス2503になる予定だ。
打ち上げに使われたソユーズ2.1bロケットは、ロシアのソユーズUやソユーズFGの後継機として開発されたソユーズ2ロケット・シリーズのひとつだ。ソユーズ2ロケットでは、従来機からエンジンの改良や、制御システムなどの電子機器の全面的な近代化などが施されている。特に後者においては、機器の軽量化と、飛行プロファイルの最適化が可能になったこと、打ち上げ能力の向上につながっている。またウクライナなどから買っていた部品を無くし、ロシア製の部品のみで造られている点も大きな特徴だ。
ソユーズ2シリーズはソユーズ2.1aとソユーズ2.1b、そしてソユーズ2.1vの大きく3種類があり、まず最初にソユーズ2.1aがデビューした。ソユーズ2.1aの1号機は2004年11月8日にサブオービタル(軌道に乗らない)飛行での試験を実施し、2006年10月19日の2号機で、初の人工衛星を搭載した打ち上げに成功した。それ以来、ロシアの通信衛星や航法衛星、偵察衛星などの打ち上げに使用されている。ソユーズ2.1aはこれまでに17機が打ち上げられ、2009年に予定より低い軌道に衛星を投入してしまった以外は、比較的安定した打ち上げを続けている。
ソユーズ2.1bは、ソユーズ2.1aの第3段により高性能なロケットエンジンを装備し、打ち上げ能力を向上させた機体で、2006年から運用に入っている。今回を含め15機が打ち上げられているが、2011年には、まさにその新しい第3段エンジンが原因で打ち上げに失敗している。
またフランスのアリアンスペース社も、ソユーズ2を輸入して運用しており、アリアン版のソユーズ2.1aはソユーズST-A、ソユーズ2.1bはソユーズST-Bと呼ばれている。STというのは同機が装備するST型と名付けられた、ロケットの直径よりも一回りほど太いフェアリングに由来している。両機を合わせて、これまでに計10機が打ち上げられている。
つまりソユーズ2シリーズは今日までに、計42機が打ち上げられていることになる(ただし第1段がまったく異なるソユーズ2.1vは含まない)。
■Войска воздушно-космической обороны провели успешный запуск космического аппарата связи : Министерство обороны Российской Федерации
http://structure.mil.ru/structure/forces/cosmic/news/more.htm?id=12004601@egNews