ISCコスモトラス社は20日、33機の小型衛星を搭載したドニエプルロケットを、ロシアのオレンブルク州にあるヤースヌィ宇宙基地から打ち上げた。ロケットにはカザフスタンの地球観測衛星に加え、日本も含めた17ヶ国、合計33機もの衛星を搭載。一度の打ち上げでの衛星数としては過去最多を記録した。
ドニエプルは、現地時間2014年6月20日1時11分11秒(日本時間2014年6月20日4時11分11秒)、ヤースヌィ宇宙基地にある地下サイロから圧縮ガスによって打ち出された。そして第1段のロケットエンジンに点火し、ロケットは飛行を開始。その後も順調に飛行を続け、目標の軌道にすべての衛星を送り込んだ。
今回ドニエプルには、合計33機もの人工衛星が搭載されていたが、メインはカザフスタンの地球観測衛星カズEOサット2であった。これは英国のサリー・サテライト・テクノロジー社(SSTL)が開発した衛星で、打ち上げ時の質量は177kg。分解能6.75mの光学センサーを搭載し、地球を観測する。
この他に、デイモス2、サウジサット4、ほどよし3号、ほどよし4号、タブレットサット・オーロラ、ユニサット6(さらに内部に4機の超小型衛星)、ブライト・トロント/ブライ・モントリオール、アプライズサット9、アプライズサット10、バグサット1、そしてクアッドパック・システムと呼ばれる超小型衛星を放出するアダプター5基の中に、21機の超小型衛星が搭載されていた。
デイモス2はスペインの地球観測衛星で、これは韓国のサトレックアイ社によって開発された。分解能0.75mの光学センサーを搭載し、地球観測を行う。打ち上げ時の質量は約300kg。
サウジサット4はサウジアラビアのKACSTが開発した衛星で、地球観測や、NASAのと共同による技術試験を実施する。打ち上げ時の質量は100kg。
「ほどよし3号」は東京大学が開発した衛星で、分解能40m、200mの小型カメラを搭載した地球観測、地上に置かれた送信機からの情報を集め、保管した後中継するストア&フォアード機能、また他から持ち込まれたミッション機器を搭載できる機器搭載スペースが設けられている。また軌道離脱を行うための過酸化水素スラスターも装備されている。打ち上げ時の質量は56.5kg。
「ほどよし4号」も東京大学が開発した衛星だが、3号とはやや異なり、分解能6mの大型カメラを搭載している。こちらもストア&フォアード機能や機器搭載スペースを搭載しているが、軌道離脱用のスラスターは、実験的にイオンエンジンが採用された。打ち上げ時の質量は63.7kg。
タブレットサット・オーロラはロシアのスプートニクスという企業が開発した衛星で、タブレットサット2U-EOと名付けられた衛星バスの実証が主な目的で、今回は分解能15mの小型カメラが搭載されている。打ち上げ時の質量は25kg。
ユニサット6はイタリアのローマ・ラ・サピエンツァ大学が開発した衛星で、永久磁石を使用した姿勢制御システムの試験を行う。さらに内部には、ティグリサット、レミュー1、アンテルサット、エアロキューブ6という4機の超小型衛星が入っており、軌道上で放出される。ティグリサットはイタリアとイラクの共同プロジェクトで、イラクを襲う砂嵐を観測。レミュー1は米国のナノサティスフィ社の衛星で地球観測を実施。アンテルサットはウルグアイ初の衛星で技術習得を目的。エアロキューブ6は米国のエアロスペース社の衛星で、キューブサット用の新しい構造を試験し、宇宙空間の放射線量を測定する機器も搭載している。
ブライト・トロント/ブライ・モントリオールは双子の衛星で、カナダとオーストリア、ポーランドの共同プロジェクトとして、編隊飛行を行い、搭載している望遠鏡で宇宙空間から明るい恒星を観測する。
ユニサット6はイタリアのローマ・ラ・サピエンツァ大学が開発した衛星で、永久磁石を使用した姿勢制御システムの試験を行う。打ち上げ時の質量は26kg。さらに内部には、ティグリサット、レミュー1、アンテルサット、エアロキューブ6という4機の超小型衛星が入っており、軌道上で放出される。
ブライト・トロント/ブライ・モントリオールは双子の衛星で、カナダとオーストリア、ポーランドの共同プロジェクトとして、編隊飛行を行い、搭載している望遠鏡で宇宙空間から明るい恒星を観測する。打ち上げ時の質量はぞれぞれ7kg。
アプライズサット9とアプライズサット10はアプライズサテライト社が運用する通信衛星で、最終的に64機の衛星群で世界的なデータ通信、衛星携帯電話サービスを展開することを目指している。製造は米国のスペースクエスト社が担当。打ち上げ時の質量はぞれぞれ14kg
バグサット1はアルゼンチンのサテロジック社が開発した衛星で、地球観測を目的としている。打ち上げ時の質量は23kg
そして、複数の超小型衛星を放出できるクワッドパックと名付けられた分離装置5基の中に、デンマークのDTUSat2、ウクライナのPolyITAN 1、イスラエルのDuchifat 1、ブラジルのナノサットC-Br 1、台湾のペース、シンガポールのポップサット・ヒップ1、ベルギーのQB50P1、QB50P2、ロシアのペルセウスM 1とペルセウスM 2、そして11機のフラック1cが搭載され、これらもすべて分離された。
ISCコスモトラス社によれば、今回の打ち上げ衛星数は33機で、世界最多記録であったと発表されている。ただしこれは、ロケットから直接分離される衛星のみの数で、ユニサット6から放出される4機は含まれていない。したがって、今回ドニエプルが運んだ衛星の純粋な数は37機となる。
ドニエプルはNATOコードネームSS-18サタンとして知られる、旧ソ連の大陸間弾道ミサイル(ICBM)R-36M UTThを衛星打ち上げ機に転用したロケットで、1999年に初めて打ち上げられた。打ち上げは今回で20機目となり、2006年に1度失敗を経験したのみで、比較的安定した打ち上げを続けている。ドニエプルの今後の打ち上げについてはまだ具体的に決まってはいないようだが、ICBMの余剰を使う点で在庫が限られていること、改修・運用コストの増加や毒性のある推進剤を使っているといった問題から、運用継続に疑問の声が上がっていること、さらにロシアとウクライナの関係悪化もあり、その将来は不透明だ。
なお、次の打ち上げでは経済産業省のASNARO、名古屋大学と大同大学のチュウブサット1(金シャチ1号)、東京大学の「ほどよし1号」、そして九州大学のQSAT-EOSの、4機の日本の衛星が搭載される予定となっている。
■Dnepr Cluster Mission 2014
http://www.kosmotras.ru/en/news/153/