中国の月探査機「嫦娥三号」が14日、月への着陸に成功した。月への探査機の着陸は1976年のルナ24以来、また月探査車が送り込まれるのは1973年のルノホート2以来のこととなる。約40年の時を経て、人類の送り出した探査機が、再び月にその足跡を刻んだ。
嫦娥三号は中国標準時12月14日21時00分(日本時間同日22時00分)、スラスターを噴射し、月を周回する軌道から離脱、月面へ向けて降下を開始した。嫦娥三号は順調に降下を続け、21時11分(同22時11分)、月の虹の入江と呼ばれる平地の、北緯44.12度、東経19.51度の地点に舞い降りた。
探査機の状態は正常で、このあと15日5時(日本時間同日6時)ごろに探査車(ローバー)の玉兎号を展開させる予定となっている。
嫦娥三号は中国の長期的な月探査計画「嫦娥計画」によって開発された月探査機で、2007年の嫦娥一号、2010年の嫦娥二号に続く、3機目の探査機である。機体は着陸機と、「玉兎号」の愛称を持つ無人探査車(ローバー)から構成されており、ローバーは月面を走行して探査を行い、また着陸機もその場で観測を行う。着陸機には月面をいくつかの波長で撮影するためのカメラが搭載されており、ローバーにはそれぞれ走行用と車輪の状態確認用、そして観測用のカメラが装備されている他、レーダーを使った月の内部構造の調査、またアルファ粒子X線分光計や赤外線分光計を用いた土壌の調査も行われる。
打ち上げ時の全質量は約3,700kgで、そのうち着陸機は1,200kg、ローバーは120kgとされる。探査車はその質量のうち、20kgが観測機器である。着陸機の電源には太陽電池と放射性同位体熱電発電機(RTG)が、ローバーの電源には太陽電池が用いられている。着陸機は約1年間、ローバーは約3ヶ月間のミッション期間が予定されている。
嫦娥三号は中国標準時12月2日1時30分(日本時間同日2時30分)、長征三号乙ロケットに搭載され、四川省にある西昌衛星発射センターの第二発射台から離昇、地表にもっとも近い高度が210km、もっとも遠い高度が389,109km、傾斜角28.5度という、月へ向かうことのできる軌道に投入された。月までの飛行中には3回の軌道修正が計画されていたが、打ち上げ時の軌道投入精度が高く、2回のみ行われ、3回目は行われなかった。
12月6日には月に到着し、17時53分(中国標準時)に月面からの高度約100kmの円軌道へと投入された。そして10日21時20分(同)には月面に最大15kmにまで近づく高度にまで軌道を下げ、今回の月面着陸に備えていた。
中国の月探査計画である「嫦娥計画」は大きく三段階に分かれており、嫦娥一号、二号の月周回衛星による探査を第一段階、そして今回の嫦娥三号、また四号の月面への軟着陸とローバーによる探査を第二段階とし、さらに続く第三段階となる嫦娥五号では月面からのサンプルリターン(試料の回収)が計画されており、そのさらに後には有人の月面探査も計画されている。
嫦娥四号の打ち上げは2015年に予定されており、今回の嫦娥三号の運用を踏まえた改良が施されることになろう。また嫦娥五号は2017年以降に打ち上げられる見通しだ。
なお時期はまだ未定なものの、米国の月探査機ルナー・リコネサンス・オービターによる、嫦娥三号の着陸地点の撮影が計画されているという。
■嫦娥三号平稳落月 中国首次地外天体软着陆成功
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