インドが先日打ち上げた火星探査機マーズ・オービター・ミッション(MOM)が11日、4回目となる軌道上昇を実施するもエンジンが早期に停止、必要な速度が得られず、予定していた高度まで上昇できなかった。早ければ12日早朝にも挽回に挑む。

MOMはインド宇宙研究機関(ISRO)が今月5日に打ち上げた火星探査機で、現在は地球を周回する軌道に乗っており、火星に向かう軌道に乗り移るため、数回に分けて軌道高度を上げる運用の最中にある。

打ち上げ直後、MOMは近地点高度(地表にもっとも近い高度)が248.4km、遠地点高度(地表からもっとも高い高度)23,550kmの軌道に投入された。そして7日、最初の軌道上昇が行われ、その結果近地点高度252km、遠地点高度28,825kmの軌道へと移った。その後、8日に2回目の軌道上昇を行い遠地点高度は40,186kmに、9日には3回目の軌道上昇で71,636kmまで上昇した。

そして迎えた4回目の軌道上昇では、遠地点高度を100,000kmまで上げる計画だった。しかしスラスターの噴射が早期に停止、予定の約1/4ほどしか加速できず、軌道高度も78,276kmまでしか上げることができなかった。

噴射が早期に停止した原因は不明としているが、この4回目の噴射においてスラスターの冗長系の試験が行われたとISROは明かしている。冗長系とは、主に使う部品、例えば電子部品や配線、配管などが壊れても機能を維持できるよう、あらかじめ組み込まれている予備の部品のことで、一度宇宙に行くと修理ができない宇宙機にとっては必須の装備である。

ISROの発表はやや不明瞭であるが、燃料タンクからスラスターへ流れる燃料の流量を制御するバルブには、そのバルブを動かすための主系と冗長系の2つのコイルがあり、通常は主系のみ使用されるが、今回試験的に両方のコイルを励磁させたという。これは火星軌道投入時など、一度しか機会がない失敗の許されない運用において、万が一主系側が壊れた際でも、冗長系を起動して運用が続けられるかを試すものであったようだ。しかし本来ならこのような試験は地上で行っているはずであり、なぜ運用中の探査機で、それも火星へ向けた軌道に乗るという、時間の制約もあるような重要な運用の最中に行ったのかは不明である。

これまでの軌道上昇噴射はすべて主系のコイルのみで行われており、今の段階では断定はできないものの、おそらく今回の冗長系試験が仇になったようだ。

また同時に、推力を増加させるため、通常探査機の姿勢制御に用いられる小型スラスター(RCS)も同時に噴射させ、こちらは想定通り、推力の増加が確認できたとしている。

ISROによれば、現在の探査機の状態は正常であり、またインド標準時12日5時(日本時間同日8時30分)にも追加の噴射を実施し、予定していた高度である100,000kmまで軌道を上げるとのことだ。

 

■Supplementary Orbit Raising Manoeuvre Planned for Mars Orbiter Spacecraft
http://www.isro.gov.in/pressrelease/scripts/pressreleasein.aspx?Nov11_2013