欧州のアリアンスペースは2022年7月7日に、フランス領ギアナのギアナ宇宙センターから新型ロケット「Vega-C(ヴェガC、ベガC)」初号機の打ち上げを予定しています。
ヴェガCは10年前の2012年2月に初飛行した「Vega(ヴェガ、ベガ)」の後継機として開発されたロケットです。高度700kmの極軌道への打ち上げ能力はヴェガの1.5トンに対して、ヴェガCでは2.2トンに向上しています。ペイロード容積が2倍になったヴェガCではフェアリングが大きくなり、後述する第1段もヴェガから大型化したため、ヴェガCの全長はヴェガよりも5m長い34.8mになっています。
第1段から第3段には固体燃料ロケットモーターが採用されていて、第1段の「P120」は別の新型ロケット「Ariane 6(アリアン6)」の固体燃料ロケットブースターとの共通化が図られています。第4段の「AVUM+」では再点火可能な液体燃料ロケットエンジンが採用されていて、複数のペイロード(人工衛星などの搭載物)をそれぞれ異なる軌道へ投入できる他に、打ち上げ後にAVUM+がスペースデブリ(宇宙ゴミ)化するのを避けるため、軌道を離脱して大気圏へ再突入させられるようになっています。
ヴェガCの初飛行「フライトVV21」の打ち上げ日時は、日本時間2022年7月7日20時13分の予定です。欧州宇宙機関(ESA)によると、VV21の主要なペイロードであるイタリア宇宙機関(ASI)の科学衛星「LARES-2」は、地上からレーザーを使って正確な飛行経路を追跡することで、一般相対性理論における慣性系の引きずり(※)を測定します。
※…質量を持つ物体が回転する時に周囲の時空が引きずられるように回転する効果のこと。フレーム・ドラッギング(frame dragging)
【▲ CGによるヴェガC初打ち上げのハイライト(動画)】
(Credit: ESA/ATG medialab)
VV21ではLARES-2の他にも6機の超小型衛星(CubeSat規格)が同時に打ち上げられます。宇宙で生体分子を検出するための解決策をテストする「AstroBio CubeSat」、微小重力環境での植物生育実験を行う「Greencube」、オーロラのような地球の磁気圏に関連した現象の理解を助けることを目的とした「ALPHA」の3機はイタリアで開発されました。スロベニアの「Trisat-R」とフランスの「MTCube-2」「Celesta」は、電子機器に対する過酷な放射線の影響を調査します。
ESAによると、ヴェガから柔軟性が向上したヴェガCでは、より大きな衛星だけでなく2機の衛星を主要なペイロードとして同時に打ち上げたり、複数の衛星を様々な軌道に投入するライドシェアミッションにも対応したりすることができるようになったといいます。また、ヴェガCは2023年に初飛行が予定されている欧州の再利用型無人宇宙船「Space Rider(スペースライダー)」の打ち上げにも使用される予定です。
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Source
- Image Credit: ESA-Jacky Huart, ESA-Manuel Pedoussaut, ESA/ATG medialab
- ESA - Vega-C set for inaugural launch
文/松村武宏