若い星々を抱く小さな楕円銀河 ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した矮小楕円銀河「IC 3430」
【▲ ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の掃天観測用高性能カメラ(ACS)で撮影された矮小楕円銀河「IC 3430」(Credit: ESA/Hubble & NASA, M. Sun)】

こちらは「おとめ座(乙女座)」の方向約4500万光年先の矮小楕円銀河「IC 3430」です。ぼんやりとした白い輝きの中に、渦巻銀河で見られるような暗い塵の帯と、青く輝く中心部分が埋め込まれています。

【▲ ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の掃天観測用高性能カメラ(ACS)で撮影された矮小楕円銀河「IC 3430」(Credit: ESA/Hubble & NASA, M. Sun)】
【▲ ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の掃天観測用高性能カメラ(ACS)で撮影された矮小楕円銀河「IC 3430」(Credit: ESA/Hubble & NASA, M. Sun)】

矮小銀河は天の川銀河と比べて規模が100分の1程度の小さな銀河で、数十億個ほどの恒星が集まってできています。矮小楕円銀河はその一種で、一般的には大きな楕円銀河と同様に渦巻腕(渦状腕)などの目立つ構造がみられない滑らかな楕円形をしています。ところが、IC 3430の中心部分では若くて高温の大質量星が青い輝きを放っていて、これらの星を生み出した最近の星形成活動を示しています。星の材料となるガスや塵に乏しく古い星が多い楕円銀河としてはめずらしい特徴です。

この画像は「ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope: HST)」の「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」で取得したデータをもとに作成されています。欧州宇宙機関(ESA)によると、ハッブル宇宙望遠鏡によるIC 3430の観測は「おとめ座銀河団」の矮小銀河でX線源を捜索する研究の一環として実施されました。X線はコンパクトで高密度な天体(ブラックホール・中性子星・白色矮星)に伴星のガスや周囲の物質が落下する過程で形成される、高温の降着円盤から放射される場合があります。ハッブル宇宙望遠鏡自身はX線を捉えられませんが、X線宇宙望遠鏡と連携することで、X線の発生源を可視光線を通じて高解像度で明らかにできるということです。

冒頭の画像は“ハッブル宇宙望遠鏡の今週の画像”としてESAから2024年7月29日付で公開されています。

 

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文・編集/sorae編集部