ロシア連邦宇宙局(ロスコスモス)は12月27日未明(日本時間)、地球観測衛星リスールスPの2号機を搭載したソユーズ2.1bロケットの打ち上げに成功した。リスールスPには光学センサーの他に、自動船舶識別装置(AIS)の受信機や、ヌクローンと名付けられた高エネルギー粒子の検出機器も搭載されている。

ロケットはバイコヌール現地時間2014年12月26日21時55分(日本時間2014年12月27日3時55分)、カザフスタン共和国にあるバイコヌール宇宙基地の31/6発射台から離昇した。そして約10分後に衛星が分離され、所定の軌道へと投入された。

その後米軍の宇宙監視ネットワークは、近地点高度約190km、遠地点高度約450km、軌道傾斜角97.3度の軌道に、衛星とロケットの最終段と思われる物体を検知しており、打ち上げ成功が裏付けられている。

リスールスPは2013年6月に1号機が打ち上げられており、今回が2号機となる。ロシアのRKTsプラグリェース社が開発した、電子光学センサー(デジタルカメラ)を装備した地球観測衛星で、同社が手がけている軍用の偵察衛星とは、姿かたちや性能などが共通しているともいわれている。

搭載されているセンサーは、白黒であれば最高で1m未満、またカラー画像であれば4mの解像度の画像を取得できる。また観測幅を広げて広範囲を撮影することもでき、さらにハイパースペクトル画像も撮影できるという。撮影された画像はロシアの政府機関や民間企業などによって活用される予定だ。

また今回打ち上げられた2号機には、自動船舶識別装置(AIS)の受信機も搭載されており、軌道上からAISを積んだ船舶の追跡し、船の安全航行や遭難時の捜索に寄与する。さらにヌクローンと呼ばれる、高エネルギー粒子の検出機器も搭載されている。ヌクローンは、かつてロシアで開発されていたカローナス・ヌクローンという科学衛星に搭載される観測機器として開発されたが、衛星の開発が中止されたことから、観測機器だけをリスールスPに載せたものだ。

ソ連崩壊後、ロシア連邦の地球観測衛星は、軍事用、民間用ともに喪失した時期もあったが、近年になってペルソーナやリスールスDK、リスールスPといった電子光学センサーを積んだ衛星や、合成開口レーダーを積んだコーンダルの打ち上げが続いており、再構築が始まりつつある。来年にはリスールスPの3号機も打ち上げられる予定となっている。

打ち上げに使われたソユーズ2.1bロケットは、ロシアのソユーズUやソユーズFGの後継機として開発されたソユーズ2ロケット・シリーズのひとつだ。ソユーズ2ロケットでは、従来機からエンジンの改良や、制御システムなどの電子機器の全面的な近代化などが施されている。特に後者においては、機器の軽量化と、飛行プロファイルの最適化が可能になったこと、打ち上げ能力の向上につながっている。またウクライナなどから買っていた部品を無くし、ロシア製の部品のみで造られている点も大きな特徴だ。

ソユーズ2シリーズはソユーズ2.1aとソユーズ2.1b、そしてソユーズ2.1vの大きく3種類があり、まず最初にソユーズ2.1aがデビューした。ソユーズ2.1aの1号機は2004年11月8日にサブオービタル(軌道に乗らない)飛行での試験を実施し、2006年10月19日の2号機で、初の人工衛星を搭載した打ち上げに成功した。それ以来、ロシアの通信衛星や航法衛星、偵察衛星などの打ち上げに使用されている。ソユーズ2.1aはこれまでに17機が打ち上げられ、2009年に予定より低い軌道に衛星を投入してしまった以外は、比較的安定した打ち上げを続けている。

ソユーズ2.1bは、ソユーズ2.1aの第3段により高性能なロケットエンジンを装備し、打ち上げ能力を向上させた機体で、2006年から運用に入っている。今回を含め16機が打ち上げられているが、2011年には、まさにその新しい第3段エンジンが原因で打ち上げに失敗している。

またフランスのアリアンスペース社も、ソユーズ2を輸入して運用しており、アリアン版のソユーズ2.1aはソユーズST-A、ソユーズ2.1bはソユーズST-Bと呼ばれている。STとは、同機が装備するST型と名付けられたロケットの直径よりも一回りほど太いフェアリングに由来している。両機を合わせて、これまでに計10機が打ち上げられている。

つまりソユーズ2シリーズは今日までに、計43機が打ち上げられていることになる(ただし第1段がまったく異なるソユーズ2.1vは含まない)。

 

■Осуществлён успешный пуск ракеты-носителя «Союз-2.1б» с космическим аппаратом «Ресурс-П» № 2
http://www.roscosmos.ru/21218/