宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2023年2月28日に会見を開き、2021年12月20日から2022年3月4日にかけて募集した宇宙飛行士候補者の選抜を行った結果、2名を新たな宇宙飛行士候補者として決定したと発表しました。
今回選抜されたのは、世界銀行で上級防災専門官を務める諏訪理(すわ・まこと)さんと、日本赤十字社医療センターで外科医を務める米田あゆ(よねだ・あゆ)さんです(いずれも現職)。
諏訪さんは1977年・東京都生まれの46歳。2007年6月にプリンストン大学大学院地球科学研究科を修了した後、2008年1月に青年海外協力隊にて派遣されたルワンダでは高校と大学で教壇に立ち、2010年11月入社の世界気象機関(WMO)を経て、2014年3月に世界銀行へ入行。現在はアフリカの防災や気候変動対策に携わっています。
ワシントンD.C.近郊在住であることからリモートで会見に参加した諏訪さんは、1985年に開催された科学万博(つくば万博)や、小学生の頃に会ったアメリカ航空宇宙局(NASA)のユージン・サーナン宇宙飛行士(※アポロ17号の船長)、中学生と高校生の頃に宇宙へ行った秋山豊寛さんと毛利衛さんから影響を受けて、徐々に宇宙飛行士への思いが醸成されていったといいます。その頃から時間は経ったものの、世界銀行で国際開発に携わるなかで宇宙開発における日本のリーダーシップに貢献したいという思いもあって、今回の宇宙飛行士候補者募集に応募したということです。
米田さんは1995年・東京都生まれの28歳。2019年3月に東京大学医学部医学科を卒業後、翌月に東京大学医学部附属病院に入職。2021年4月には日本赤十字社医療センターに入職し、現在は同センター並びに2022年10月から派遣されている虎の門病院で外科所属の医師として、手術や病棟業務、救急対応などにあたっています。
米田さんが宇宙飛行士を知ったきっかけは幼少期に父親から贈られた向井千秋さんの伝記だったといい、宇宙から地球を眺めて感動する向井さんの姿に感銘を受けたといいます。民間による宇宙飛行も始まってより多くの人々が宇宙に行く時代が到来し、宇宙での滞在時間や飛行距離が長くなるなかで、自身の医師としてのキャリアが活かせるのではないかという思いから、今回の宇宙飛行士候補者募集に応募したということです。
JAXAによると、13年ぶりの実施となった今回の宇宙飛行士候補者募集には、健康診断結果の提出期限である2022年4月4日正午の時点で4127名から応募がありました。その後は複数回の試験を経て候補者が絞り込まれ、書類選抜では2266名、0次試験(英語試験・一般教養試験・STEM分野の試験など)では205名、一次試験(医学検査・プレゼンテーション試験など)では50名、二次試験(医学検査・医学特性検査・面接試験)では10名が合格。諏訪さんと米田さんは最後の三次試験(資質特性検査・運用技量試験など)に合格した2名となります。諏訪さんと米田さんはどちらも合格する自信はほとんどなく、会見の前日に結果を知らされた時には驚くとともに、宇宙飛行士候補としての大きな責任を実感したといいます。
今回選抜された宇宙飛行士候補者は、NASAの有人月面探査計画「アルテミス」で月に立つ可能性もあります。諏訪さんはアルテミス計画に少しでも貢献できるよう訓練を頑張りたい、米田さんは月からは地球がどう見えるのかを伝えられるように精進し、可能であれば月に立ちたいと語っていました。お二人は2023年4月1日にJAXAへ入社し、宇宙飛行士として認定を受けるための様々な訓練に臨むことになります。
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文/sorae編集部