ドイツ航空宇宙センター(DLR)は1月10日、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の地表に着陸している探査機「フィラエ」(フィーレイ)に対して指令(コマンド)を送信した。フィラエとの通信は昨年7月以来途絶えており、今回のコマンドにも応答はなく、このまま運用を終えることになる可能性が高い。

DLRはこの日、フィラエの姿勢を変えて太陽光に当たりやすくし、また太陽電池の表面に積もった塵を落とすことを目的に、探査機内のリアクション・ホイールを動かすようコマンドを送信した。しかし現在まで応答はなく、ホイールが動いたかどうかはわからず、コマンドが届いているかも不明だという。

運用チームは今後も、彗星探査機「ロゼッタ」を通じてフィラエからの通信を探すとしているが、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は現在、徐々に太陽から離れており、今月末にはその距離が3億kmを超えるため、この1月中がフィラエと通信ができる最後のチャンスだという。そのため、このまま運用終了となる可能性が高い。

フィラエは2004年3月2日、母機であるロゼッタに搭載されて地球を出発し、10年を超える航海を経て、2014年8月6日に目的地であるチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に到着した。そしてロゼッタの調査によって着陸地点が選ばれ、11月13日0時33分(日本時間)に、フィラエは彗星表面に向けて投下された。

しかし、機体を彗星表面に固定するために器具がうまく作動せず、2度バウンドした後、起伏の多い岩場と思われる場所に落ち着いた。機体も大きく傾いていたこともあり、太陽光が十分に当たらず、太陽電池による発電が十分にできない状態だった。しかし、あらかじめ充電されていたバッテリーを使って活動を開始し、当初予定していた観測は、ほぼすべて完了することに成功している。そして着陸から約57時間後、バッテリーが切れたフィラエは活動を停止し、休眠状態に入った。

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星はその後、徐々に太陽に近付く軌道に乗っていたことから、フィラエに当たる太陽光の量が増え、バッテリーが再充電され、再起動する可能性はあると予測されていた。その予測は当たり、2015年6月13日に再起動に成功し、7か月ぶりにその声を地球に届けた。その後も7月9日に通信が途絶えるまで、散発的にデータを送り続けてた。

Image Credit: ESA

■DLR Portal - News - New command for Philae
http://www.dlr.de/dlr/en/desktopdefault.aspx/tabid-10081/151_read-16365/#/gallery/21643