惑星協会は1月26日、太陽の光を受けて航行するソーラー・セイルの実験機ライトセイルが、今年5月にアトラスVロケットによって打ち上げられると発表した。

惑星協会は宇宙探査の広報、普及、教育活動を行っている民間団体で、1980年にカール・セーガンやブルース・マレイ、ルイ・フリードマンといった、伝説的な人物らによって設立された。

同協会は長年、ソーラーセイルの開発を行っている。ソーラー・セイルは、宇宙空間で巨大な帆を張り、そこに太陽の光を受け、その反作用で航行するというもので、燃料を使うことなく、宇宙空間を進むことができる。アイディア自体は古くからあるものの、帆の素材や展開方式などの点から実現は難しく、近年になりようやく実用化の目処が立ってきた。2010年には、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発したIKAROSが飛行に成功している。

惑星協会ではこれまでに、2005年にコスモス1を、2009年にはナノセイルDといった実験機を開発したが、いずれもロケットの打ち上げが失敗したことで失われている。その後、2010年にナノセイルD2は打ち上げに成功、帆が展開できることを実証した。

ライトセイルは惑星協会が新たに開発したソーラー・セイルで、打ち上げ時は30 x 10 x 10cmの直四角柱の形をしているが、帆を展開したときの大きさは32平方mにもなる。打ち上げはアトラスVロケットが用いられ、X-37B OTV-4の打ち上げに相乗りする形で行われる。

今回打ち上げられるライトセイルは試験機に位置づけられており、帆が問題なく展開できるか、姿勢制御システムが設計通り機能するかなどが試される。ただ、地球低軌道に乗ることから、地球の大気からの抵抗が大きいため、太陽光による推進はできない。またこの抵抗によって、打ち上げから4週間ほどで大気圏に再突入する見込みだという。

一方、惑星協会はまた別のライトセイルも開発しており、こちらは2016年にファルコン・ヘビー・ロケットで打ち上げられる予定となっている。このときは高度約720kmの軌道に乗るため、地球の大気の抵抗はほとんど無いことから、太陽帆による航行が可能になるという

惑星協会のビル・ナイCEOは「航空宇宙の世界には、『一回のテストは、千の専門家の意見に値する』という古いことわざがあります。6年間におよぶ開発を終え、私たちはいよいよライトセイルが飛び立つときを見る用意ができました」と語る。

開発費などは同協会の会費や寄付金などによってまかなわれている。

「ライトセイルはまさしく『みんなの衛星』です。惑星協会の会員のおかげで、創設者であるカール・セーガンやブルース・マレイ、ルイ・フリードマンらが思い描いていた、民間人によって造られるソーラー・セイルという夢が現実のものとなりました。世界中の宇宙ファンのみなさん、ぜひライトセイルの旅に参加してください。私たちが力を合わせれば、世界を変えることだってできます」。

 

■Planetary Society Announces Test Flight for Privately Funded LightSail Spacecraft | The Planetary Society
http://www.planetary.org/press-room/releases/2015/planetary-society-announces.html

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