2017年12月、NASAのX線観測衛星「チャンドラ」は原始星「HOPS 383」で発生したX線フレアを捉えました。原始星のなかでも特に若いグループに数えられるHOPS 383における今回の観測は、太陽のような恒星の磁気活動が始まるタイミングに新たな知見をもたらすことになるかもしれません。

■誕生したばかりの原始星にも活発な磁気活動が存在する可能性を示す

原始星「HOPS 383」を描いた想像図(背景)と、チャンドラによるX線の観測結果(右上)。原始星はガスと塵でできたドーナツ状の繭に囲まれているとみられている(Credit: NASA/CXC/M. Weiss)

オリオン座の方向およそ1400光年先、反射星雲「NGC 1977」の近くに位置するHOPS 383は、ガスと塵でできた分子雲が重力収縮して誕生したばかりの段階(クラス0)にあたる原始星とみられています。HOPS 383の周囲はガスや塵がドーナツ状に集まった繭のような構造が取り囲んでおり、やがては太陽の半分ほどの質量を持つ恒星になるだろうと考えられています。

2017年にチャンドラが観測したのは、恒星としてはまだ幼いHOPS 383で発生したX線フレアでした。原始星が発した光のほとんどは繭にさえぎられてしまうものの、強力なX線は通り抜けることができます。3時間20分ほど続いたフレアの強さは、太陽で観測された最も強力なフレアの約2000倍にも達したとされています。

Nicolas Grosso氏(マルセイユ天体物理学研究所)らの研究グループは、X線の放射はより進化した段階の原始星では活発な磁気活動を示す特徴とされているものの、HOPS 383のように早い段階の原始星における磁気活動の存在については議論が続いているとした上で、今回のチャンドラによるX線フレアの観測は、初期段階の原始星における活発な磁気活動を示す証拠だと述べています。

こうした早い段階の原始星における磁気活動は、原始星周辺の物質を流出させたり組成を変化させたりすることにつながり、その後に形成される惑星などにも関わっていくものとみられています。研究に参加したDavid Principe氏(マサチューセッツ工科大学)は「45億年前の太陽が放射したX線も、やがて太陽系の惑星やその他の天体を形成することになる材料が生み出される上で、大きな役割を果たした可能性があります」と語ります。

誕生したばかりの太陽を調べるために時間をさかのぼることはできませんが、後に太陽に似た恒星になるとみられる原始星を観測することは人類にも可能です。研究を率いたGrosso氏は「HOPS 383のような原始星を観測することで、過去の太陽系における重要な出来事を再現することができます」とコメントしています。

ドーナツ状の繭の一部をカットして描いた原始星の想像図。原始星の周辺には繭から落ちてきた物質が降着円盤を形成していると考えられている(Credit: NASA/CXC/M. Weiss)

 

Image Credit: NASA/CXC/M. Weiss
Source: chandra.harvard.edu
文/松村武宏

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