欧州宇宙機関(ESA)は12月16日、金星探査機ヴィーナス・エクスプレスの運用を終了すると発表した。当初の計画から2倍以上もの期間にわたって探査を繰り広げ、ミッションは大成功に終わった。このあと探査機は、2015年初頭に金星の大気圏に突入し、燃え尽きる予定だ。

ヴィーナス・エクスプレスは、主に金星の大気に焦点を当てた観測を行うことを目指して開発された。2005年11月9日にカザフスタン共和国のバイコヌール宇宙基地から、ソユーズFG/フレガート・ロケットによって打ち上げられ、2006年4月11日に金星を南北に回る周回軌道に投入された。その後、金星の地表からもっとも近い地点が約200km、もっとも遠い地点が約66,000km、24時間で金星を1周する軌道に移り、探査活動に入った。

当初予定されていた4年のミッション期間を完了した後も、探査機の状態は良好だったため、ミッション期間を延長して運用が続けられていた。今年6月18日から7月11日にかけては、軌道高度を約130kmにまで大きく下げて金星大気の上層部に「突入」し、その抵抗でブレーキをかけて軌道を変える「エアロ・ブレーキング」と呼ばれる軌道制御技術の試験も行われている。ある意味捨て身に近い試験だったが、これが行えたのも、すでにミッションを十分にこなし、いつ運用が終わってもおかしくない状態に近付いていたためだ。

エアロ・ブレーキングの試験完了後、ふたたび軌道を上げ、ESAでは2015年以降も、探査機が行き続ける限りミッションを続ける意向を示していた。それに向け、軌道高度を上げるために、今年11月26日から30日にかけてスラスターを噴射する運用を行っていたが、その最中の28日にヴィーナス・エクスプレスとの通信が途切れるという問題が発生した。その後、通信は回復したものの断続的となり、断片的に得られたデータから、おそらくはスラスター噴射によって燃料が切れてしまったために、探査機の姿勢を制御できなくなり、またその結果、アンテナを地球の方向に正しく向けられなくなったために、通信も途切れることになったと見られている。

ヴィーナス・エクスプレスは今後、金星大気との抵抗で徐々に高度が下がっていき、2015年1月後半から2月前半ごろに金星の大気圏に突入し、燃え尽きる予定だ。

 

■Venus Express goes gently into the night / Venus Express / Space Science / Our Activities / ESA
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