アリアンスペース社は10月16日、通信衛星インテルサット30とアルサット1を搭載したアリアン5 ECAロケットの打ち上げに成功した。アリアン5シリーズはこれで62機の連続成功となった。
ロケットはギアナ現地時間2014年10月16日18時43分(日本時間2014年10月17日6時43分)、南米仏領ギアナにある、ギアナ宇宙センターのELA 3から離昇した。ロケットは順調に飛行し、離昇から約28分後にインテルサット30を、また約34分後にアルサット1を分離した。
衛星の投入予定軌道は、近地点高度が250km、遠地点高度が35,786km、傾斜角が6度の静止トランスファー軌道であり、米国のレーダーによる観測によれば、ほぼ予定通りの軌道に乗っていることが確認されている。
インテルサット30は米国のインテルサット社が運用する通信衛星で、スペース・システムズ/ロラール社によって製造された。72基のKuバンド・トランスポンダーを搭載し、西経95度の静止軌道から、米国全域に通信サービスを提供する。衛星の寸法は8.6 x 3.4 x 3.1mで、太陽電池パドルを開いた際の翼長は32.4mにもなる。打ち上げ時の質量は約6,300kgで、設計寿命は15年が予定されている。
アルサットはアルゼンチンのアルサット社が運用する通信衛星で、製造も同じくアルゼンチンのINVAP社が担当した。ただし搭載機器はフランスのタレス・アレーニア・スペース社が供給している。
衛星は24基のKuバンド・トランスポンダーを持ち、西経71.8度の静止軌道から、アルゼンチンやその周辺地域にDTHテレビ・サービスやインターネット、IP電話などのサービスを提供する。寸法は2.0x 1.8 x 3.9 m、太陽電池パドルを開いた際の翼長は16.5m。打ち上げ時の質量は2,985kgで、設計寿命は15年が予定されている。
アリアン5は、エアバス・ディフェンス&スペース社が開発、製造しているロケットで、中でもECA型はアリアン5シリーズの最新型で、また主力機として活躍中のロケットだ。
アリアン5は、それまでアリアンスペース社が運用していたアリアン4ロケットを代替する目的で開発された。アリアン4は116機が打ち上げられ、失敗はわずか3機で、成功率97.4%という極めて高い信頼性を持つロケットだったが、1970年代に開発されたアリアン1を改良して造られたロケットであり、次第に性能が時代に追いつけなくなってきた。
アリアン5の検討は1984年から始まったが、当時は米国がスペースシャトルを打ち上げ始めた頃であり、欧州でも小型のスペースシャトル、エルメスの検討が始まっていた。そこでアリアン5には、エルメスを打ち上げられる、強力な打ち上げ能力を持つロケットになることが求められた。
だが、エルメスは開発を進めるにつれて、質量が目標を大きく超過するようになった。それに合わせてアリアン5の打ち上げ能力も増やされ、さらにエルメスの質量が増加すると、またそれに合わせてアリアン5の打ち上げ能力も増やされるという事態に陥った。その後、結局エルメスは開発が中止され、欧州の手元には、強力すぎる打ち上げ能力を持ったアリアン5ロケットだけが残った。
しかし、禍を転じて福と為すの言葉のように、この過大な能力を生かして、静止衛星を2機同時に搭載して打ち上げるアイディアが生み出され、その目論見は的中し、現在世界で最も成功している商業ロケットになった。
アリアン5の初期型であるアリアン5Gは、1996年6月4日に打ち上げられたが、爆発し、失敗に終わる。翌1997年10月30日に打ち上げられた2号機も、予定より高度が低い軌道に衛星を乗せる失敗を起こし、さらに1年後の1998年10月21日に打ち上げられた3号機でようやく成功を収めた。
その後、2002年12月11日には打ち上げ能力を増したアリアン5 ECAが登場し、こちらも1号機は失敗したものの、その後はすべて成功を収めている。その他、アリアン5G+、5GSといったバリエーションも存在し、またアリアン5 ESは欧州の宇宙ステーション補給機ATVの打ち上げに使われ、今後も航法衛星ガリレオの打ち上げで使われることになっている。
今回の打ち上げ成功により、アリアン5シリーズは62機、またアリアン5 ECAに限っても、45機の連続成功となった。
また現在、第2段をさらに改良し、打ち上げ能力を高めた、アリアン5 MEの開発が行われている。アリアン5 MEで開発された技術は、さらに次世代のロケットであるアリアン6にも活かされる予定だ。
■Arianespace - Press Release - Arianespace successfully launches two satellites for the Americas
http://www.arianespace.com/news-press-release/2014/10-16-2014-VA220-success.asp