2017年8月にアメリカの重力波望遠鏡「LIGO」によって検出された重力波「GW170817」は、中性子星どうしの合体によって生じる爆発現象「キロノバ」にともなうものだったことがわかっています。このキロノバによって生成されたとみられる重元素のひとつが、今回初めて特定されました。

中性子星どうしが合体する瞬間の想像図(Credit: University of Warwick/Mark Garlick/ESO)

■「鉄より重い元素がキロノバで生成される」とする理論を証明

GW170817はLIGOによって発生がキャッチされて以降、人の目で見える可視光線だけでなく、赤外線、紫外線、X線といった、あらゆる波長の電磁波による観測が実施されました。

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今回、ヨーロッパ南天天文台(ESO)のパラナル天文台にある「超大型望遠鏡(VLT)」が観測したGW170817のデータを再解析したところ、キロノバによって生成されたとみられるストロンチウム(Sr)の痕跡が見つかりました。GW170817に関する過去の研究において、キロノバによって実際に重元素が生成されたらしいことまでは判明していましたが、具体的にどの元素が生成されたのかまではわかっていませんでした。

核融合によって輝く恒星の内部では、水素よりも重いヘリウム炭素酸素ケイ素といった元素が生み出されているものの、よりも重い元素は生み出されていないとされています。ウランのように鉄よりも重い元素が生成される「r過程」と呼ばれるプロセスが引き起こされるには、超新星爆発やキロノバのように極端な環境が必要だと考えられてきました。

研究を率いたコペンハーゲン大学のDarach Watson氏が「キロノバがこの元素(ストロンチウム)を宇宙にもたらしたことが証明された」とコメントしているように、今回確認されたストロンチウムの存在は、キロノバによって実際にr過程が引き起こされたとする従来の研究結果を強く後押しするものとなります。

なお、ストロンチウムは赤い炎色反応を示すことから、身近なところではその化合物が花火に利用されています。私たちの身体を構成する元素はもとより、電子機器や宝飾品に欠かせない金をはじめとした重元素も生み出す星々。人間も宇宙の一部であるという事実を、改めて実感させられる研究成果です。

重力波「GW170817」の発生源とみられる天体(赤丸内)。右下に中心が見える銀河「NGC 4993」においてキロノバが発生した(Credit: ESO/J.D. Lyman, A.J. Levan, N.R. Tanvir)

 

関連:2016年に観測されたガンマ線バースト、実は「キロノバ」だった

Image: University of Warwick/Mark Garlick/ESO
Source: ESO –  MPIA
文/松村武宏