隕石被害の最古の記録をトルコで発見
2020年1月にイギリスで撮影された流星(Credit: Chris Small)

地球には流星として観測されるものをはじめ、小さな天体がひんぱんに落下しています。その一部はまれに人的被害を及ぼすことがあり、2013年2月にはロシアに落下したチェリャビンスク隕石によって1000名以上が負傷しました。今回、19世紀に現在のイラクへ落下した隕石によって2名が死傷したとする公的な記録についての研究成果が発表されています。

■オスマン帝国の公的文書から隕石落下の報告を発見

Ozan Ünsalan氏(エーゲ大学、トルコ)らがトルコ共和国の国家文書総局に収蔵されていたオスマン帝国時代の文書から発見したのは、現在のイラク北部の都市スレイマニヤ付近に落下した隕石の記録です。

記録によると、1888年8月22日20時30分頃南東から飛来した隕石が村外れの丘におよそ10分間に渡り雨のように次々と落下。爆風によって作物や農地に被害が及んだだけでなく、飛び散った破片によって1名が命を落とし、重症を負った1名に麻痺が残ったとされています。

同年9月13日、当時のモースルの知事が隕石落下による被害の報告をオスマン帝国の中央政府宛てに送付。同年10月8日にこれを受理した政府は、翌9日に当時の皇帝アブデュルハミト2世に報告しています。Ünsalan氏らが国家文書総局で見つけたのは、この一連の情報伝達が記録された3通の書簡です。

研究チームによると、隕石によって人が死傷したとする記録は古くから残されていますが、その多くは必ずしも信頼性の高い情報ではないといいます。いっぽう、スレイマニヤの隕石落下については知事から中央政府を経てオスマン帝国皇帝へと伝えられた公式な記録が残されており、確認されたものとしては隕石による人的被害を高い信頼性で伝える最古の記録であると研究チームは結論付けています。

 

Image Credit: Chris Small
Source: Science
文/松村武宏