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米スペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ(スペースX)社は5月6日、開発中の有人宇宙船「ドラゴン2」の打ち上げ中断システム(LES, Launch Escape System)の試験を実施した。

試験は米東部夏時間2015年5月6日9時00分(日本時間2015年5月6日22時00分)、フロリダ州にあるケープ・カナヴェラル空軍ステーションの第40発射台(SLC-40)から行われた。時間ちょうどに宇宙船に装備されている「スーパードレイコー」と名付けられたスラスターが噴射され、ドラゴン2は勢いよく空中へ舞い上がった。そして上空で、宇宙船の後部にあるトランク部を分離し、続いてドローグ・シュートと呼ばれる小さなパラシュートを開き、さらにそのメイン・パラシュートを展開してゆっくりと降下し、打ち上げから1分39秒後に大西洋上に着水した。

今回の試験は、ドラゴンに装備された打ち上げ中断システム(もしくは打ち上げ脱出システムとも)が設計通り機能するかを試験するために実施された。打ち上げ中断システムは、宇宙船を載せたロケットが発射台の上で爆発しそうになったり、飛行中にエンジンが止まるなどといった問題が発生したりした際に、宇宙船をロケットから引き剥がすことで、搭乗している宇宙飛行士の命を守る役割を持つ。

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アポロ宇宙船やソユーズ宇宙船の打ち上げ中断システムは塔のような形をしており(そのことからアボート・タワーやエスケープ・タワーなどとも呼ばれる)、宇宙船の先端に装着されるが、ドラゴン2では宇宙船自体に装備された「スーパードレイコー」と呼ばれるスラスターを使う。スーパードレイコーはモノメチルヒドラジンと四酸化二窒素を推進剤とし、また3Dプリンターで製造されているという特徴を持つ。スーパードレイコーはドラゴン2の側面に、2基を1セットとした計8基、4セットが装備され、2秒で100m、5秒で500mもの距離を飛行することが可能だ。また、脱出時だけではなく、宇宙船が陸上へ着陸する際の噴射でも用いられる。

スペースX社のイーロン・マスクCEOが、試験後にTwitterに投稿したところによると、今回の試験での最大速度は時速約555km、最大到達高度は1187m、パラシュート展開時の高度は970mであったという。速度と高度は予定より若干小さかったが、これはスラスターのうち2基1セットの推進剤の混合比率で異常が起き、予定より低い性能しか出なかったためだという。

ただ、マスク氏によると、脱出の際には8基中4基のエンジンが稼動すれば十分であるため、問題はないとしており、スペースX社も今回の試験は「成功」と発表している。

試験に用いられたドラゴン2には、270個近い数のセンサーや、自動車の衝突試験などでおなじみのダミー人形などが搭載されており、今後得られたデータが分析され、さらなる開発に役立てられる。

スペースX社ではこの夏に、飛行中のロケットからドラゴン2を脱出させる試験を実施する予定だ。今度はカリフォーニア州のヴァンデンバーグ空軍基地から打ち上げられることになっており、すでに打ち上げ用のロケットの試験なども進められている。

これらが順調に進めば、2016年12月ごろに無人のドラゴン2宇宙船を地球周回軌道に打ち上げる試験が行われ、そして2017年にも有人飛行が実施される予定だ。

 

■Crew Dragon Completes Pad Abort Test | SpaceX
http://www.spacex.com/news/2015/05/06/crew-dragon-completes-pad-abort-test

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