カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のClaire Williams氏を筆頭とする研究チームは、初期宇宙の星団で恒星どうしの衝突がどれくらい起きていたのかを、理論モデルで調べた研究成果を発表しました。研究チームの成果をまとめた論文は学術誌「The Astrophysical Journal」に掲載されています。

星がぎっしり詰まった初期宇宙の星団
約138億年前のビッグバンから数億年間という初期宇宙の様子は、まだはっきりとはわかっていません。
近年ではジェームズ・ウェッブ(James Webb)宇宙望遠鏡の観測によって、ビッグバンから約4億6000万年後の銀河で5つの星団が見つかっています。過去の研究によると、これらの星団における星の密集度(見かけの面積あたりの星の質量)は、現在の宇宙における典型的な若い星団のおよそ1000倍に達するといいます。
現在の宇宙では、ほとんどの場合、恒星どうしが衝突することはめったにないとされています。銀河どうしの衝突・合体は観測されているものの、星々の間には何光年もの隔たりがあるため、星と星は衝突せずにすれ違うと考えられているからです。
では、これほど星が密集していた初期宇宙の星団では、恒星どうしの衝突はどれくらいの頻度で起きていたのでしょうか。
恒星どうしの衝突はありふれた現象だった?
研究チームの計算によると、初期宇宙の高密度な星団の多くでは、恒星どうしの衝突はありふれた現象だった可能性があるようです。
中心にブラックホールが存在しない星団の場合、星団に属する恒星の移動速度はあまり速くならないため、衝突後は合体して1つの恒星になることが示されました。合体で誕生した星は星団の中心へと沈み込むように移動していき、さらに合体を繰り返すことで、より重い星へと生まれ変わっていくことになります。
研究チームの標準的な条件における試算では、中心で合体を繰り返す星の質量は星団の密度に大きく左右されるといい、太陽の10倍に満たないものから10万倍を超えるものまで、かなりの幅があったといいます。
巨大なブラックホールの“種”になった可能性
研究チームによると、合体を繰り返して重く成長した恒星は、寿命を迎えるとブラックホールになり得ます。研究チームのモデルでは、こうした高密度な星団で誕生したブラックホールは、様々な銀河の中心にあるとみられる超大質量(超巨大)ブラックホールへと成長する“種”になった可能性があるといいます。
恒星どうしの衝突は初期宇宙の高密度な星団の多くではありふれた出来事であり、太陽の数十万倍から数十億倍以上もの質量を持つ巨大なブラックホールが誕生したプロセスにも関わっていたのかもしれません。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
関連記事
- 初期宇宙の銀河周囲にもすでに重元素が存在していた? ウェッブ宇宙望遠鏡が検出
- やはりブラックホール星? 初期宇宙の天体「リトル・レッド・ドット」の新たな研究成果
- 初期宇宙の“霧”を晴らした紫外線 ハッブルが観測した約124億年前の銀河「MXDFz4.4」
参考文献・出典
- UCLA - Stellar collisions may have been common when the universe was young
- Williams et al. - A Cosmological Framework for Stellar Collisions at High Redshift in Proto-globular Clusters, Nuclear Star Clusters, and Little Red Dots (The Astrophysical Journal)










