こちらは、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が観測した「オリオン大星雲(M42)」の一部、「オリオンバー(Orion Bar)」と呼ばれる領域。オリオン座の方向、地球から約1350光年先にあります。

星々の紫外線が削った濃い雲の帯
画像に向かって右上から左下へ斜めに伸びるオレンジ色の厚い帯がオリオンバーと呼ばれる構造で、この領域の名前の由来になっています。
ESA(ヨーロッパ宇宙機関)によると、画像の左上方向の視野外には、大質量の若い星々からなる有名な散開星団「トラペジウム」があります。トラペジウムの星々が放つ強い紫外線は、ガスを加熱して散らすことで星雲を削り、画像に広がる空洞やひも状の構造を生み出しました。
オリオンバーは、この紫外線が濃いガスと塵(ダスト)の雲にぶつかる境目にあたり、トラペジウムの星々によって少しずつ侵食されているといいます。
明るい星々と若い星を取り巻く円盤
画像の中央やや右と右下でひときわ明るく輝く2つの星は、「オリオン座θ2(シータ2)星」を構成する3つの星のうちの2つです。中央やや右の星(θ2星A)は、それ自体が3つの星からなる三重連星であるため、肉眼でも見えるほどの明るさがあるといいます。
一方、オリオン大星雲では、惑星が誕生する現場とされる原始惑星系円盤(若い星を取り巻くガスと塵の円盤)を持つ星が数多く見つかっています。画像に向かって右上寄り、オレンジ色の帯の縁近くに小さく写る「d203-506」も原始惑星系円盤のひとつで、強い紫外線にさらされています。
紫外線が炭素化合物の生成を促す?
ウェッブ宇宙望遠鏡によるd203-506の観測では、炭素原子1個と水素原子3個からなるプラスの電荷を帯びた分子「メチルカチオン(CH3+)」が検出されています。メチルカチオンは宇宙に最も多い水素とは比較的反応しにくい一方、ほかの分子とは反応しやすく、より複雑な炭素の分子が作られるきっかけになります。
紫外線は複雑な有機分子の形成をさまたげると長く考えられてきましたが、観測データを分析した研究チームは、メチルカチオンの生成に必要なエネルギーが紫外線によってもたらされていると考えています。
ESAによると、隕石の研究を通じて、太陽系の惑星が形成された当時の原始惑星系円盤も大量の紫外線を浴びていたことが示唆されています。惑星を生み出す円盤が強い紫外線にさらされているオリオンバーは、太陽系の誕生時に私たちが知る生命の土台となる炭素化合物がどうやって作られたのかを紐解く手がかりと言えそうです。
冒頭の画像はESA/Webbから2023年6月26日付で公開されました。
本記事は2023年7月8日公開の記事を再構成したものです。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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