
パデュー大学のVandana Ramakrishnan氏(研究当時は同大学の大学院生)を筆頭とする研究チームは、ろくぶんぎ座の方向、約117億光年先(赤方偏移z=3.1)の巨大な原始銀河団の集まり「COSMOS-z3.1-A」を追跡調査した結果、これまでに知られている中で最も遠方かつ最古の「原始超銀河団」であることを確認したとする研究成果を発表しました。
研究チームによると、COSMOS-z3.1-Aは近傍宇宙で最大の銀河団である「かみのけ座銀河団」の2倍程度の質量(天の川銀河の約5000倍)を持つ巨大な構造へ成長していくと見積もられています。研究チームの成果をまとめた論文は学術誌「The Astrophysical Journal」に掲載されています。

見かけの位置だけではわからない本当の構造
原始超銀河団とは、複数の原始銀河団が寄り集まり、将来的に銀河団同士から成る「超銀河団」へと成長していく初期段階の巨大構造を指します。研究チームは今回、チリのセロ・トロロ汎米天文台にあるビクター・M・ブランコ4m望遠鏡に搭載された観測装置「DECam(ダークエネルギーカメラ)」を用いた超広域サーベイ「ODIN」の観測データをもとに調査を実施しました。
ODINサーベイは、水素原子が散乱・放射する特定の紫外線の波長である「ライマンα(アルファ)線」を放っている銀河「ライマンα銀河」などの捜索を目的とした観測プロジェクトです。研究チームはこのODINサーベイの観測データから、これまでに約150個の原始銀河団の候補を発見しています。ただ、サーベイで得られた撮像データだけでは個々の銀河が本当に銀河団を構成しているのか、それとも偶然同じ方向に重なって見えているだけなのかを判別することはできません。
そこで研究チームは、ケックII望遠鏡、ジェミニ南望遠鏡、メイヨール望遠鏡といった地上の望遠鏡による分光観測(※電磁波の波長ごとの強さの分布であるスペクトルを得る観測手法)を行い、COSMOS-z3.1-Aに含まれる約400個の候補銀河のうち249個について、正確な距離を直接測定しました。分光観測が及ばなかった残りの候補銀河については、近傍銀河の分布を手がかりに確率的な手法で距離を割り当てることで、構造全体の三次元的な姿を再構築しています。
【▲ 原始超銀河団「COSMOS-z3.1-A」の3次元モデル(Credit: CTIO/NOIRLab/DOE/NSF/AURA/DSS2/NSF–DOE Vera C. Rubin Observatory; Acknowledgment: The original version of this 3D model was created by A. Ortiz (Purdue); Image Processing: T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF NOIRLab), M. Zamani & D. de Martin (NSF NOIRLab); Motion Graphics: R. Proctor)】
「かみのけ座銀河団」の2倍規模へ成長する可能性
研究チームによる分析の結果、COSMOS-z3.1-Aの内部では10個の高密度な領域が寄り集まっており、原始銀河団が集まった原始超銀河団と呼べる規模であることが明らかになりました。また、同じろくぶんぎ座ではやや小規模な別の原始銀河団の集まり「COSMOS-z3.1-C」(4個の高密度領域で構成)も同時に確認されています。
同様の巨大構造は、7個の高密度領域で構成される約111億光年先(赤方偏移z=2.4)の原始超銀河団「Hyperion(ハイペリオン)」が唯一の前例でしたが、COSMOS-z3.1-Aはさらに古い時代の宇宙に存在していたことになります。
今回の成果は、小さな天体が合体してより大きな天体へと徐々に成長することで宇宙の大規模構造が形成されたと考える「階層的構造形成(ボトムアップ)」のモデルを裏付けるものとなりました。ベラ・ルービン天文台で2026年7月に開始され、10年にわたって実施される予定の広域サーベイ「LSST(Legacy Survey of Space and Time)」との連携を通じて、今後も同様の巨大構造が見つかっていくと期待されています。
編注:記事中の距離は、天体から発した光が地球で観測されるまでに移動した距離を示す「光路距離」(光行距離)で表記しています。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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参考文献・出典
- NOIRLab - Extremely Massive Galaxy Proto-Supercluster Smashes Distance Records
- Rutgers University - Scientists See One of the Universe’s Largest Structures Taking Shape
- Ramakrishnan et al. - ODIN: Characterizing the Three-dimensional Structure of Two Protocluster Complexes at z = 3.1 (The Astrophysical Journal)
























