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カリフォルニア大学バークレー校の学部生Emerald Lin氏を筆頭とする研究チームは、観測データからAI(人工知能)が探し出した「重力レンズ」の候補が本物かどうかを確かめた研究成果を発表しました。研究チームの成果をまとめた論文は学術誌「The Astrophysical Journal Supplement Series」に掲載されています。

DESIレガシー撮像サーベイのデータから見つかった重力レンズの例(Credit: DESI Legacy Imaging Surveys/LBNL/DOE & KPNO/CTIO/NOIRLab/NSF/AURA; Image Processing: T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF NOIRLab), D. de Martin & M. Zamani (NSF NOIRLab))
【▲ DESIレガシー撮像サーベイのデータから見つかった重力レンズの例(Credit: DESI Legacy Imaging Surveys/LBNL/DOE & KPNO/CTIO/NOIRLab/NSF/AURA; Image Processing: T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF NOIRLab), D. de Martin & M. Zamani (NSF NOIRLab))】

はるか遠くの銀河を拡大する“宇宙のレンズ”

重力レンズ(重力レンズ効果)とは、手前にある天体の大きな質量によって周囲の時空間がゆがみ、背後にある遠方の天体から発せられた光の経路が曲げられることで、その像がゆがんだり拡大して見えたりする現象のこと。時には像が弧状やリング状になったり、複数に分裂して見えたりすることもあります。

もともとの姿からは大きくゆがんでしまうものの、本来であれば観測が困難なほど遠方にある銀河の様子も、重力レンズを利用すれば詳しく調べることが可能になります。場合によっては、星団や個々の星まで観測できることもあるといいます。

NOIRLab(アメリカ国立光学・赤外天文学研究所)によると、電磁波で直接観測できないとされるダークマター(暗黒物質)の分布を明らかにしたり、宇宙の膨張速度をより正確に測定したりする上で、重力レンズが役立てられています。

76件のうち55件が重力レンズだと確認

研究チームは今回、「DESIレガシー撮像サーベイ(DESI Legacy Imaging Surveys)」の画像からAIが探し出した重力レンズの候補のうち76件を確かめるため、ESO(ヨーロッパ南天天文台)の「VLT(超大型望遠鏡)」による観測を行いました。

DESIレガシー撮像サーベイは、天体までの距離を測定して宇宙の3Dマップ作成を目指す観測装置「DESI(Dark Energy Spectroscopic Instrument=ダークエネルギー分光装置)」の観測対象を選定するために行われた、13年にわたる取り組みです。

AIはこうした膨大なデータから候補となる天体を見つける能力に長けていますが、弧状に見える天体が実際に重力レンズかどうかを確かめるには、効果をもたらしている手前の天体と、効果を受けている背後の天体までの距離を測定する必要があります。

そこで研究チームは、VLTに搭載されている広視野面分光装置「MUSE」を使用しました。遠方の天体から届いた光(電磁波)は、宇宙の膨張にともなって波長が引き伸ばされています。電磁波の波長ごとの強さの分布であるスペクトルを得る分光観測を行い、スペクトルに現れる輝線や吸収線(原子やイオンが特定の波長の光を吸収・放出することで生じる線のこと)の位置を調べることで、その天体までの距離を割り出すことができるのです。

観測の結果、76件のうち55件では手前の天体と背後の天体の距離が両方とも測定され、重力レンズであることが確認されました。他の21件のうち、15件は手前の天体までの距離のみが測定されており、追加の観測が必要とされています。また、残る6件は重力レンズではなく、渦巻銀河の一部などだったことがわかりました。

DESIレガシー撮像サーベイのデータから見つかった重力レンズの例(Credit: DESI Legacy Imaging Surveys/LBNL/DOE & KPNO/CTIO/NOIRLab/NSF/AURA; Image Processing: T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF NOIRLab), D. de Martin & M. Zamani (NSF NOIRLab))
【▲ DESIレガシー撮像サーベイのデータから見つかった重力レンズの例(Credit: DESI Legacy Imaging Surveys/LBNL/DOE & KPNO/CTIO/NOIRLab/NSF/AURA; Image Processing: T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF NOIRLab), D. de Martin & M. Zamani (NSF NOIRLab))】

天文学でも広まるAIの活用

NOIRLabによると、今回確認された重力レンズは、2026年8月に打ち上げられたNASA(アメリカ航空宇宙局)の「ナンシー・グレース・ローマン(Nancy Grace Roman)」宇宙望遠鏡などの観測と組み合わせることで、ダークマターの分布や遠方の銀河の研究に役立つといいます。

今回の成果は、天文学の研究で重要な役割を果たす“宇宙のレンズ”を探索する上で、AIを活用する道筋を示した一例になったと言えそうです。

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典