ターザン5 CX1」と呼ばれる連星系が数年間という(天文学的には)短い間に、ある時はX線で輝き、またある時は電波のパルスとして観測されるという珍しい振る舞いをしていることが明らかになりました。連星系とは2つ、またはそれ以上の星が互いの周りを回っているもので、この場合は中性子星(重たい星が超新星爆発という爆発現象を起こした後に残る超高密度の天体)と、太陽のような恒星がペアになっています。「ターザン5」自体は球状星団と呼ばれる星の集まりを指していて、地球から約19,000光年離れた場所にあります。

最初の画像は左右ともターザン5を観測したものですが、左がハッブル宇宙望遠鏡により可視光を観測したもの、右はX線観測衛星「チャンドラ」によるものです。チャンドラによる画像はX線のエネルギーの大きさにより赤(低エネルギー)・緑(中程度のエネルギー)・青(高エネルギー)に着色されており、ターザン5 CX1はその中心付近に位置しています(下図の「CX1」)。

ターザン5のX線画像。(Credit: NASA/CXC/Univ. of Amsterdam/N.Degenaar, et al.)

ターザン5 CX1のような連星系の場合、重たい中性子星のほうが「相方」である低質量の星の物質を引き寄せ、その物質は中性子星の周りで円盤状になって回転しています。これを「降着円盤」と言い、降着円盤が放つX線によってその存在を確認できることから「低質量X線連星」と呼んでいます(下のイメージ図)。

低質量X線連星のイメージ図(Credit: ESO/L.L.Christensen; NASA/GSFC/W.Feimer)

降着円盤で回転する物質は中性子星の表面に降り積もっていき、それに伴って中性子星は回転速度を上げていきます。中性子星は非常に小さな天体ですが、直径が10~20キロメートルほどの大きさになるまで(そこに太陽以上の質量が詰め込まれています)回転速度はどんどん速くなり、1秒に数百回転するほどになります。最終的には物質が降り積もる速さが緩やかになり、残った物質は中性子星の磁場により飛ばされてしまって「ミリ秒パルサー」と呼ばれる天体に落ち着きます。ミリ秒パルサーは電波を放射する天体で、自転の間に電波が地球のほうに向いたときに観測することができ、その間隔は文字通りミリ秒程度という非常に短い時間です。

天文学者たちは低質量X線連星が数十億年後にミリ秒パルサーに進化すると予想していましたが、ターザン5 CX1ではこれら2つの状態を数年間という短い時間で行き来していることがわかりました。2003年にチャンドラが観測したときにはターザン5 CX1はX線で明るく輝き、低質量X線連星のように振る舞っていました。その後2009年から2014年にかけて再びチャンドラが観測したところ、X線の輝きは10分の1ほどになり、代わりに2012年から2014年にかけてVLA(Very Large Array)という電波望遠鏡で電波源として観測されました。このときのデータでミリ秒パルスが観測されたわけではありませんが、X線や電波のスペクトル(波長ごとの放射量)からはミリ秒パルサーになっていると考えられました。しかしその後2016年にチャンドラが観測したところX線で再び明るく輝いており、低質量X線連星に戻ったように振る舞っていたのです。

中性子星の外層を「クラスト」と呼びますが、クラストを理解するにはターザン5 CX1のような天体がどのようにして低質量X線連星に戻ってしまうのかを調べることが重要になります。別の低質量X線連星の研究では、物質が中性子星に降り積もりX線で輝いている際に中性子星のクラストが熱せられ、それが時間をかけて冷えていくというシナリオが描かれています。ただし冷えるために要する時間は中性子星により異なり、数百日というものもあれば5年半におよぶものもあります。その違いはまだ研究の途上にありますが、中性子星の磁場の強さや、中性子星の年齢によるのかもしれません。

天文学では私たちが見ているような時間スケールではほとんど変化しないような事象も多いですが、ターザン5 CX1のような天体を見るとダイナミックに変化する宇宙というのをリアルに感じられるように思います。また、チャンドラは打ち上げから20年以上たちますが、長期間運用してきたからこそ得られた成果と言うこともでき、今後の観測にも期待したいところです。

 

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Image: X-ray: NASA/CXC/Univ. of Amsterdam/N.Degenaar, et al.; Optical: NASA, ESA
Source: NASA
文/北越康敬

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