ユナイッテド・ローンチ・アライアンス(ULA)は、現地時間10月4日、「アトラスV」ロケットの打ち上げに成功しました。同ロケットには、ルクセンブルクの通信衛星会社SESの衛星「SES-20」と「SES-21」が搭載されており、高度約3万6000kmの静止軌道へ投入されました。ULAとSESによると、打ち上げと軌道への投入は無事に成功したということです。

【▲ SESの通信衛星2機を搭載したアトラスVロケット(Credit: ULA)】

アトラスVロケットは米国東部夏時間2022年10月4日17時36分、米国フロリダ州のケープカナベラル宇宙軍基地第41発射施設から打ち上げられました。約4分後、ロケットの第1段機体と「セントール」上段の分離を実施。セントールによる3回のエンジン燃焼を経て、SES-20は打ち上げから約5時間38分後、SES-21は打ち上げから約6時間18分後にロケットからの分離に成功しました。

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一般的な静止衛星の打ち上げでは、分離後に衛星自身の推進システムを用いることで、数か月間かけて静止軌道へ移動します。しかし、今回の打ち上げミッションではロケット上段のエンジンを使用して、静止軌道に近い軌道へ衛星を直接投入したため、従来よりも早く衛星の運用を開始できます。2機の通信衛星は搭載されている推進システムを使って軌道を修正した後、2022年11月の運用開始を目指しています。

今回打ち上げられたSES-20とSES-21は、ボーイング社が設計したCバンド搭載型の全電化衛星です。対象地域はアメリカ全土で、テレビやラジオなどの電波だけでなく、ネットワーク通信サービスも担います。また、米国のFCC(連邦通信委員会)は通信衛星業者に対して、5Gの活用を促進するために衛星が利用するCバンドの一部を5Gサービスに割り当てる「5Gファースト計画」を行っており、SES-20とSES-21はこの取り組みに合わせて打ち上げと運用が実施されます。

【▲SES-20とSES-21の想像図(Credit: SES)】

打ち上げに使用された「アトラスV531」ロケットは、全長59.7mです。衛星を保護するフェアリングは直径5.4mのタイプが使用され、2機の衛星とセントール上段が覆われました。2機の衛星を1機のロケットで打ち上げる方法は「デュアル・ローンチ」と呼ばれており、垂直に結合された形で打ち上げられます。第1段の固体燃料ロケットは最大5本のうち3本が使用され、上段のセントールには1基のエンジンが搭載されました。

【▲ SES-20とSES-21は垂直に結合された状態で打ち上げられた(Credit: Boeing Twitter)】

なお、SES衛星シリーズは、今回打ち上げられた2機を含む6機の衛星で構成されます。SES-17(以下のロゴに記載なし)は2021年10月、SES-22は2022年6月に軌道へ投入されています。そして、SES-18とSES-19は2022年第4四半期に打ち上げられる予定です。

【▲ SES衛星のロゴ(Credit: SES)】

 

Source

  • Image credit: ULA, SES, Boeing Twitter
  • ULA - ATLAS V SES-20 SES-21
  • SES- SES Successfully Launches Second and Third C-Band Satellites on ULA Rocket
  • Boeing - Boeing-Built SES Satellites Send, Receive First Signals
  • SPACE NEWS - SES closer to $4 billion payout after ULA launch to near-geostationary orbit
  • 総務省 - 世界情報通信事情 米国のLocal 5G

文/出口隼詩

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