米国エネルギー省オーク・リッジ国立研究所は2015年12月22日、木星以遠などに飛ぶ深宇宙探査機の電源として使うための「プルトニウム238」の生産を再開したと発表した。米国が同物質の生産を行うのは約30年ぶり。
プルトニウム238は長年、米国やソヴィエト、ロシアなどで、宇宙探査機の電源として使われてきた。プルトニウム238が崩壊する際に出す熱を発電に利用することができ、太陽光が弱くなる深宇宙や、夜が長く続く星を探査する際など、太陽電池による発電が難しい場所の探査機にとっては、ほぼ唯一の電源である。
プルトニウム238は半減期が87.7年とほどよい長さをもち、また崩壊時にほとんどアルファ線しか出さないことから遮蔽も簡単なため使いやすく、これまでに「ヴォイジャー」や、土星探査機「カッシーニ」、火星探査機「キュリオシティ」などにも搭載されている。
米国は1980年代後半に生産を停止、以降はロシアから輸入していたが、これも2009年に終了したため、現在は在庫しかない。現在の在庫量は35kgで、このままでは2020年代に使い切ってしまう計算とになる。こうした背景から、宇宙探査を継続するために再生産は必須となっていた。
米航空宇宙局(NASA)による次のプルトニウム238を使う電池を搭載するミッションは、2020年に打ち上げが計画されている大型の火星探査計画「マーズ2020」となる。
Image Credit: ORNL
■ORNL achieves milestone with plutonium-238 sample | ORNL
https://www.ornl.gov/news/ornl-achieves-milestone-plutonium-238-sample