人工衛星の増加に伴い、衛星が反射する太陽光や、搭載機器から意図せず放射される電波が天文観測を妨げることが、近年課題となっています。宇宙利用が急速に広がるなか、星空を観測する環境への影響が問題視されています。
ESA(ヨーロッパ宇宙機関)は2026年10月8日、人工衛星が天文観測に与える影響を軽減するため、IAU(国際天文学連合)の下で暗く静かな空の保護に取り組む組織「CPS(Centre for the Protection of the Dark and Quiet Sky)」と、協力に向けた覚書を締結したと発表しました。署名は10月7日、トルコのアンタルヤで開催された国際宇宙会議で行われました。IAUによると、ESAはCPSに参加する初の宇宙機関となります。
観測画像に写る光の筋と、衛星から漏れる電波
多数の人工衛星を連携させる「衛星コンステレーション」の拡大に伴い、地球低軌道では衛星の数が急速に増えています。衛星が反射する太陽光は、望遠鏡で撮影した画像に明るい筋として写り込み、暗く遠い天体の観測を妨げることがあります。

この影響を受けるのは、可視光などで天体を調べる光学観測だけではありません。衛星に搭載された電子機器からは、通信のために送信する電波とは別に、不要な電波が漏れ出すこともあります。こうした電波も、宇宙からの微弱な信号を捉える電波望遠鏡の観測に干渉する可能性があります。今回の協力が目指す「暗く静かな空」とは、光による妨げと電波による干渉の両方が少ない空のことです。
天文観測は、宇宙の起源や生命を育み得る惑星を調べるだけでなく、地球に接近する小惑星の追跡にも用いられています。ESAは、こうした観測への干渉を防ぐ方法を見いだすことが重要だとしています。
衛星の設計段階から、反射光と電波を抑える
対策の出発点となるのは、衛星を打ち上げる前の設計段階です。ESAは、太陽光の反射を抑える表面素材や、不要な電波を出しにくい電子機器の開発に加え、地上の望遠鏡から衛星がどのように見えるかを予測するモデルなどが必要だと説明しています。
IAUの発表によると、両者は衛星の明るさや電波特性の評価手法を共有するほか、衛星の表面処理や材料・設計の改善に取り組みます。さらに、天文観測への影響を減らすため、状況に応じて柔軟に対応できる衛星の運用方法の開発や、「責任ある宇宙活動」の基準・指針づくりと、その普及も進めるとしています。今回の覚書は、宇宙活動の基本原則を定めた「宇宙条約」の第9条にある、他の条約当事国の利益に配慮するという考え方に沿うものと位置付けられています。
CPSには天文学の研究機関や天文台、研究者、企業、市民などが参加しています。ESAは技術面の専門知識を提供するとともに、産業界との連携を強化し、実用的な対策の開発を進めます。
宇宙を利用する活動と、宇宙を観測する活動をどのように両立させるか。天文学者と衛星運用者が対話を重ね、技術を磨く今回の協力は、将来の世代にも星空を残すための一歩となるでしょう。
編集/sorae編集部










