ボローニャ大学/イタリア国立天体物理学研究所(INAF)のGreta Ettorre氏を筆頭とする研究チームは、高速で自転する天体「パルサー」と連星をなす星について、その星が進化のどの段階にあるのかを調べた研究成果を発表しました。研究チームの成果をまとめた論文は学術誌「Astronomy & Astrophysics」に掲載されています。

ミリ秒パルサーは連星で生み出される
今回の研究対象は、きょしちょう座の方向、地球から約3万光年先の球状星団「NGC 362」で見つかったパルサー「NGC 362D」です。
パルサーとは、重い恒星が超新星爆発を起こした後に残る天体である中性子星のうち、自転に合わせて規則正しい電波などのパルスが観測される天体です。なかでも1秒間に数百回という速さで自転するものは、パルスの周期が1000分の1秒台と短いことから「ミリ秒パルサー」と呼ばれており、NGC 362Dもミリ秒パルサーに分類されます。
ミリ秒パルサーの速い自転は、連星をなす伴星から流れ込んだガスとともに、回転の勢い(角運動量)を受け取った結果だと考えられています。この考え方では、伴星はパルサーにガスを渡す過程で外層を失い、やがて白色矮星(恒星が外層を失った後に残る高密度な天体)へ進化すると考えられています。
しかし研究チームの論文によると、パルサーにガスを受け渡すプロセスが終わった直後の段階における伴星は観測例が乏しく、詳しいことはわかっていませんでした。
電波望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡の観測データから特定
NGC 362Dは、64基のアンテナからなる南アフリカの電波望遠鏡「MeerKAT(ミーアキャット)」の観測で発見されました。電波観測で特定された位置をもとに、研究チームがハッブル(Hubble)宇宙望遠鏡の観測データを調べたところ、伴星を特定することに成功しています。
研究チームによると、NGC 362Dの伴星は質量が太陽の約0.18倍の白色矮星です。論文の掲載時点では「ミリ秒パルサーの伴星」として特定された白色矮星のなかでは最も若いといい、ガスの受け渡しが終わったのは約6億年前で、温度が低下していく手前の段階にあると推定されています。
伴星を取り巻く物質の痕跡か
観測された伴星の明るさと理論モデルの予測を比較したところ、光の波長が短くなるほど予測よりも暗く観測されていたことがわかりました。INAFによると、ミリ秒パルサーと白色矮星からなる連星でこのような特徴が見つかったのは初めてです。
研究チームは、伴星の周囲に残った物質が光の一部を吸収している可能性があると考えており、こうした物質の影響によって伴星が白色矮星ではないと誤って分類される可能性を論文で指摘しています。
また、NGC 362Dの伴星は比較的明るいことから、今後の分光観測で伴星の動きを測定すれば、2つの天体の質量比を絞り込める可能性があります。伴星からパルサーへとガスの受け渡しが終わった直後の段階にあるNGC 362Dは、ミリ秒パルサーとその伴星がたどる道筋を解き明かす重要な手がかりになると期待されています。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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参考文献・出典
- MEDIA INAF - Ngc 362d, due primati per le pulsar millisecondo
- Ettorre et al. - The youngest white dwarf companion to a millisecond pulsar: Insights from NGC 362D (Astronomy & Astrophysics)
























