ESA(ヨーロッパ宇宙機関)は2026年10月19日付で、ESAのユークリッド宇宙望遠鏡の観測で新たな彗星が発見されたことを発表しました。

こちらがその彗星「C/2026 S1(Euclid)」です。ESAによると、画像処理の過程で背景の星々などは削除されており、彗星とそのガスや塵(ダスト)でできた雲である「コマ」のみが示されています。
ユークリッドは彗星探しには不向き?
実は、ユークリッドは彗星を見つけるのが得意な宇宙望遠鏡ではありません。
ESAによると、ユークリッド宇宙望遠鏡はダークマター(暗黒物質)やダークエネルギーの影響を探るために、数十億個の銀河の形や動きを観測することを目的としています。遠くの銀河をじっくり観測するために設計されているので、太陽系内という“至近距離”を素早く動く彗星を追いかけることは想定外なのです。
加えて、ユークリッド宇宙望遠鏡は彗星が見つかりやすい領域を避けて観測を行っています。惑星の公転面に沿った帯状の領域には小惑星や彗星が多くみられる一方で、惑星間空間に分布する塵の散乱光が遠くの銀河の観測を妨げてしまうからです。
画像に写り込んだパターンから新たな彗星を特定
そんなユークリッド宇宙望遠鏡の観測で彗星が見つかるきっかけになったのは、ヘルシンキ大学の博士課程に在籍するMikko Pöntinen氏が開発した、画像に写り込む太陽系の小天体を検出するソフトウェアです。このソフトウェアが、ユークリッド宇宙望遠鏡によって2026年9月に取得された複数の画像から、高速で移動する天体の痕跡である筋状のパターンを検出したのです。
Pöntinen氏がさらに詳しく調べたところ、この天体は彗星の特徴であるコマとみられるぼんやりとした雲に包まれていました。既知の彗星や小惑星とは一致しなかったことから、Pöntinen氏は新しい彗星としてIAU(国際天文学連合)に報告。その後、2026年10月8日に彗星であることが正式に確認されました。
ESAによると、この彗星は2026年10月の発表時点で地球から約13億km(約8.7天文単位)離れています。また、ユークリッド宇宙望遠鏡が避けている惑星の公転面沿いではなく、公転面の“真上”にあたる方向にあるといいます。

太陽系形成時の手がかりになる彗星をいち早く見つけるために
太陽系の内側へ初めて飛来する彗星は、約46億年前の太陽系誕生時からほとんど変化しておらず、地球の水や生命の材料がどこから来たのかを探る手がかりになると考えられています。そうした彗星を探査するため、ESAはJAXA(宇宙航空研究開発機構)と協力して、彗星を宇宙空間で待ち構えるミッション「コメット・インターセプター(Comet Interceptor)」を計画しています。
ユークリッド宇宙望遠鏡のプロジェクトサイエンティストを務めるESAのValeria Pettorino氏によると、今回発見されたC/2026 S1(Euclid)はコメット・インターセプターの探査目標には適さないものの、発見から報告までのプロセスは2つのミッションの連携を試す実例になったといいます。
今回の発見は、銀河の観測を本来の役割とするユークリッド宇宙望遠鏡が、太陽系の起源に迫るコメット・インターセプターの彗星探査を支え得ることを示すものになったと言えそうです。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
関連記事
- ESA宇宙望遠鏡「ユークリッド」のデータから観測史上最古のクエーサーを発見 約131億年前に存在
- 輝く6000万の星々 ユークリッド宇宙望遠鏡が捉えた天の川銀河の中心部
- ハッブルとユークリッドが観測した「キャッツアイ星雲」のクローズアップ&ワイドビュー
























