5月上旬から中旬にかけて肉眼で観測できるかもしれないと予測されていた「アトラス彗星(C/2019 Y4)」ですが、4月上旬に核の崩壊が確認されるとともに増光もストップし、肉眼では見えない明るさで推移しています。今回、崩壊したアトラス彗星を撮影した「ハッブル」宇宙望遠鏡の画像が公開されています。

■4月20日の画像からは30個ほどの断片を確認

ハッブル宇宙望遠鏡を使って4月20日に撮影されたアトラス彗星。核の断片はおよそ30個が確認されたという(Credit: NASA, ESA, D. Jewitt (UCLA), Q. Ye (University of Maryland))

David Jewitt氏(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)らとQuanzhi Ye氏(メリーランド大学)らの2つの研究チームは、4月20日と4月23日にハッブル宇宙望遠鏡を使ってアトラス彗星を撮影しました。

地上からの観測では3~4個ほどに分裂したように見えていたアトラス彗星の核の断片は、ハッブルによる観測では20日の時点で大小およそ30個、23日の時点ではおよそ25個を確認したとされています。日を追うごとに断片が減っているように見えますが、同じ断片でも撮影するタイミングによって太陽光の反射具合が違っていたり、見えている断片が日によって異なっていたりする可能性もあるため、わずか数日で様子が大きく変化する原因を断定するのは難しいとJewitt氏はコメントしています。

アトラス彗星の崩壊についてYe氏は「本当にエキサイティングです。断片化する彗星はたいてい暗くて見えませんし、このような規模の崩壊は10年に1度か2度しか起きないからです」と語ります。一般の立場からすれば肉眼で見えそうになくなったことは残念に思えますが、予測できないタイミングで迅速に進行する彗星核の断片化は原因が不明確なままであり、崩壊したアトラス彗星の観測はその謎に迫るチャンスだからです。

ガスの放出にともない自転が加速されることで彗星核の断片化が起きると考えているJewitt氏は「データをさらに分析することで、この説を検証できるかもしれません。ハッブル宇宙望遠鏡によるアトラス彗星の観測は重要です」と語っています。

なお、ハッブル宇宙望遠鏡によって撮影された断片の大きさから、アトラス彗星の核はもともとフットボールフィールド2つ分の長さ(200~250mほど)を超えない程度の大きさだった可能性があるとされています。断片化したアトラス彗星は5月23日に地球から約1億1500万kmまで接近し、その8日後となる5月31日には太陽から3700万km以内のところを通過するとみられています。

ハッブル宇宙望遠鏡によって4月20日(左)と4月23日(右)に撮影されたアトラス彗星。断片の様子が大きく異なっているように見える(Credit: NASA, ESA, D. Jewitt (UCLA), Q. Ye (University of Maryland))

 

関連:肉眼で見える可能性のアトラス彗星、核の崩壊が確認される

Image Credit: NASA, ESA, D. Jewitt (UCLA), Q. Ye (University of Maryland)
Source: ESA/Hubble
文/松村武宏

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