JAXA(宇宙航空研究開発機構)は2026年10月18日、火星衛星探査計画「MMX(Martian Moons eXploration)」の探査機を搭載する「H3」ロケット10号機の打ち上げ日時を決定したと発表しました。
JAXAによると、打ち上げ日時は日本時間2026年10月20日4時41分03秒、打ち上げ予備期間は2026年10月21日~11月9日です。打ち上げは種子島宇宙センターの大型ロケット発射場から行われます。
火星の衛星の起源解明に挑む

MMXの目的地は、火星の衛星「Phobos(フォボス)」です。フォボスは火星の表面から約6000kmを公転する直径約20~30kmの小さな天体で、本格的な探査がまだ行われていないことから、JAXAは「太陽系で最も重要な未踏峰」と呼ばれることもあると述べています。
実は、火星の衛星の起源はまだはっきりとはわかっておらず、火星に天体が衝突して形成されたとする「巨大衝突説」と、太陽系の外縁から飛来した小惑星が火星の重力に捕らえられたとする「捕獲説」が提唱されています。
ISAS(JAXA宇宙科学研究所)によると、捕獲説が正しければ、フォボスの物質には小惑星「リュウグウ」のように水を含む鉱物や有機物が豊富に含まれている可能性があるといいます。一方、巨大衝突説であれば、火星に衝突した小惑星や彗星に由来する物質と、火星の地殻やマントルに由来する物質が混ざり合っていると考えられています。
また、フォボスの表面には隕石の衝突で火星から吹き飛ばされた物質のかけらも降り積もっていると考えられており、JAXAによればサンプルに紛れ込んでいる可能性がある火星そのものの物質のかけらから、火星表面の化学組成やその歴史に迫れる可能性もあるといいます。
JAXAは、MMXが持ち帰るサンプルの分析を通じて火星の衛星の起源を明らかにするとともに、太陽系ができたころに水や有機物がどのように運ばれ、天体にもたらされたのかの解明に貢献することを目指すとしています。
打ち上げから地球帰還までの約5年間
MMX探査機の火星圏への到着は2027年8月の予定で、まず火星を周回する軌道に入ったあと、フォボスから見て探査機がその周りを回っているように見える軌道(擬周回軌道)に移ってフォボスの詳しい観測を開始します。
フォボス表面からのサンプル採取後は、もうひとつの衛星「ダイモス」のフライバイ観測を経て2030年11月に火星圏を出発。2031年7月に地球へ帰還して、サンプルを収めたカプセルがオーストラリアで回収される計画です。
約5年間にわたる複雑なミッションに挑むMMX探査機は、「往路モジュール」「探査モジュール」「復路モジュール」という3つのモジュールで構成されており、打ち上げ時の質量は4480kgに達します。往路モジュールは火星圏到着後、探査モジュールは火星圏出発前にそれぞれ分離され、復路モジュールのみが地球へ帰還します。


探査モジュールには筒状の採取器を地面に打ち込む「C-SMP」と、NASA(アメリカ航空宇宙局)が提供する気体の圧力を利用した「P-SMP」の2種類の採取装置が搭載されています。フォボスへの着陸は2回予定されており、10g以上のサンプル採取を目指します。
また、サンプル採取に先立って、CNES(フランス国立宇宙研究センター)とDLR(ドイツ航空宇宙センター)が共同で開発したローバー「IDEFIX」がフォボスへ向けて降下します。

MMX探査機に搭載されてフォボスに向かうIDEFIXは、表面の状態を調べることで、探査機本体の安全な着陸に役立てられるデータの収集も行います。
この大きな探査機を打ち上げるH3ロケット10号機では、長さ16.4mのロングフェアリングを使用する「H3-24L」形態が初めて採用されました。
種子島宇宙センターを飛び立ったH3ロケット10号機は、地球周回軌道を離れて火星へ向かうための「火星遷移軌道」へMMXを送り出します。H3ロケットが惑星間空間へと探査機を打ち上げるのは、今回が初めてとなります。


MMXの旅の始まりは全国から見える可能性も
なお、JAXAによると、H3ロケット10号機が予定どおり2026年10月20日に打ち上げられた場合、リフトオフ5分30秒後頃から上昇した機体に太陽の光が当たることで、条件がそろえばほぼ日本全国から観測できる可能性があるといいます。JAXAは各地からの見え方を確認できるウェブページを公開しています。

地球から火星圏へ往復し、世界でまだ誰も成し遂げていない「火星の衛星から物質を持ち帰る」という約5年間のミッションが、いよいよ始まろうとしています。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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