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地球を周回する「ハッブル」宇宙望遠鏡(Credit: NASA)
【▲ 地球を周回する「ハッブル」宇宙望遠鏡(Credit: NASA)】

アメリカ航空宇宙局(NASA)は現地時間7月17日、ハードウェアに問題が生じたことで1か月ほど中断していた「ハッブル」宇宙望遠鏡の科学観測が再開されることを発表しました。

NASAによると、現地時間6月14日午後、ハッブル宇宙望遠鏡の科学機器を制御・調整するためのペイロードコンピューターが停止。ペイロードコンピューターの稼働状況を確認するための信号を受信できなくなったメインコンピューターによって、すべての科学機器が自動的にセーフモードへ切り替えられました。

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当初はメモリモジュールの劣化がペイロードコンピューター停止の原因と疑われていたものの、運用チームによるバックアップのメモリモジュールに切り替える作業は成功せず、別のハードウェアが原因となっている可能性が浮上。テストを繰り返した運用チームは、ペイロードコンピューターと同じ「SI C&DH(Science Instrument Command and Data Handling、科学機器コマンドおよびデータ処理)」ユニットに組み込まれているパワーコントロールユニット(PCU)が原因であると結論付けました。

PCUはペイロードコンピューターを構成するハードウェアに電力を安定供給する役割を担っています。PCUにはペイロードコンピューターとそのメモリに対して一定の電圧(5ボルト)を出力するレギュレーターや、レギュレーターの出力電圧が許容範囲を外れた場合にペイロードコンピューターを停止させる保護回路が含まれています。

運用チームはレギュレーターの出力電圧が許容範囲を外れているか、あるいは保護回路の経年劣化がペイロードコンピューターの停止を招いたものと分析。コマンドを送信してもPCUをリセットできなかったため、ペイロードコンピューターとPCUを含むSI C&DHユニット全体をバックアップに切り替える作業を7月15日に実施したところ、これに成功。セーフモードからの復旧作業を経て、科学機器を用いた観測の再開へと至りました。

なお、SI C&DHユニットの切り替え作業は2008年にも実施されており、このとき問題が生じたユニットはスペースシャトル「アトランティス」による2009年5月のサービスミッション(STS-125)において交換されています。

NASAのビル・ネルソン長官は、ハッブル運用チームの現在のメンバーおよび問題解決を支援するべく参加した元メンバーを「誇りに思う」と述べるとともに、その献身的かつ思慮深い取り組みのおかげでハッブル宇宙望遠鏡はこれからも視野を広げ続けるだろうとコメントしています。

スペースシャトル「アトランティス」から分離されたハッブル宇宙望遠鏡。最後のサービスミッションが実施された2009年5月に撮影(Credit: NASA)
【▲ スペースシャトル「アトランティス」から分離されたハッブル宇宙望遠鏡。最後のサービスミッションが実施された2009年5月に撮影(Credit: NASA)】

 

関連:間もなく31周年の「ハッブル」一時セーフモードに、現在は科学観測に復帰

Image Credit: NASA
Source: NASA
文/松村武宏

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